「なんでいるの?って顔してる」
『だ、だって....さっき、出て、いった...』
「忘れ物したの」
『嘘つき』
「ウソじゃねーって」

私の頭を優しくなでたり、髪を弄んでる彼の手は本物で
幻じゃなく本物。

「やっぱり泣いちゃったか」
『泣いてないもん...欠伸だし』
「それは大きな欠伸だことで」
『でしょ...だって、名無しさんだから』
「そーでした」
『時間大丈夫なの?』
「うん、まだ余裕」
『そっか』
「名無し」
『なに..?』
「ちゃんと連絡するし、写真も送る」
『写真はどうでもいいけど...うん』
「ひでぇなw...だから名無しもたまには写真送って?」
『束縛?』
「名無しの笑顔が見たいだけ」
『...わかった...変顔送ってあげる』
「まじで?」

どうしてだろう、御幸くんの腕の中は落ち着く。
傍から見たら変なんだろうな私たち。

玄関先にしゃがみ込んで抱き合ってるんだもん。

「あ、あとな」
『まだあるの...?』
「帰ったら一緒に指輪見に行こうな」
『へ?』
「あ、役所にもいかねぇと」
『へ?!』
「子供の名前も考えてー」
『ちょ、ちょっと待って』
「ん?」
『どういうこと?』

頭が追い付いていかない。変人なのは前から知っていたけど....

「だから、もうこれ以上さみしくないように結婚しよ?って言ってるんだけど」
『え?』
「あ、まだ婚約もしてねぇな」
『え、え?!』
「てことで、先にこっちの指予約。あ、左手ももちろん」

御幸くんはそういうと私の右手を取り、薬指に口づけをした。

「今度から御幸になんだから、一也って呼べよ?奥さん」
『ば、ばかー』
「あ、泣いた」
『早くいけ変態』
「ほんとひでぇなおいwで、返事は?」
『帰ってきてすぐ手出さない素敵な優しい旦那様がいいです』
「頑張ります....」
『だから、頑張ってきてよ?...一也くん』
「あーー!もう!俺やっぱ休んでいいかな...」
『だめ!』
「キスしたいけど、今したら絶対止まる自信なんてねぇよ!」
『一也くん』
「ばか名無しかわいすぎる....!」
『おかえりなさいのチューするから頑張って』
「....絶対だからな!覚えとけよ!」
『うん』

そういって彼は私のオデコにチューして今度こそ遠征に行ってしまった。
でもさっきよりは悲しくない。やっぱり御幸君はすごいのかもしれない。

婚約予行練習
(一週間後はプロポーズ)


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