01.


※20歳超えてる設定

"今週末には絶対に会いにいくから!"
なんてメールを寄こしてきたのはもうかれこれ一週間前。

彼は忙しい人だ。きっと今も大変なんだろう。
一人ベランダで夜空を眺める。

彼が乗ってる車と同じ車種が通る度にナンバープレートを確認しては溜息ひとつ。

「君待つと我が恋ひをればわが屋戸のすだれ動かし秋の風吹く...か」

額田王の万葉集の一つ。なんで今思い出すんだろう。
手に持った携帯は震えることなく静かに私に持たれている。

"まだ?"は何かいかにも早く来てほしいみたいでやだ。
"来ないの?"も没、
"会いたい"なんてもってのほか。

「くそ高尾」

どうしてだろう。たった数文字を打つだけで携帯を持つ手が指が震える。

「...会いたいよ」
「俺だって会いたかったし」
「....あほ」
「遅くなってごめんね蒼那ちゃん」
「許さない」

いつの間に入ってきたんだこいつは。
でも、今は会えたから。ただ会えたからそれでいい。


((わが君を恋しく思いながら待っていると、わが家のすだれを動かしながら秋風が吹く))

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