今生きている証
※名前変換ありません。
各小説主人公名は変換前固定になります。
※各主人公に「カカシのエッチ」と言わせてみました。
*目次
「君と綴る」本編中のお話
「インディゴの糸を解く」本編中のお話
「欠けた月の成れの果て」のお話
「刻が運命を告げたなら」のお話
「毒の華は今日も笑う」のお話
▽「君と綴る」のお話
夕方。
報告書を書き終え提出し、里内をゆるりと歩いていると。その足が意識せずとも末廣亭へと向かってしまう。
(いつからこんなに正直になったんだか)
苦笑しながら、彼女の店の扉を開ける。
時間がゆったりと流れる店内。
いつも通りカウンターにいる彼女。軽く手を上げ挨拶をして。軽く世間話でもと回り込んだら。
「は、はたけさんのーーー」
「うん?」
「はたけさんのエッチ!」
「えっ」
突如、エッチ呼ばわれされた。
(どういうことだ)
あまりにも前触れがなさすぎて、いくらオレでも動揺を隠せずその場で固まる。
顔を真っ赤にした遼はそんなオレを上目遣いで見、肩を窄めながら両手で顔を覆った。そして指の隙間から再びオレを見、申し訳なさそうに項垂れる。
「すみません、あの……、実は、罰ゲームで……」
「罰ゲーム?」
「ナルトくんとババ抜きしてたんですけど、負けちゃったんです……」
オレがカウンターの裏を覗くと、遼の足元でしゃがんで隠れてニヤニヤしていたナルトと目が合った。あー、なるほど。それで罰ゲームってことですか。
「ナルト」
呼ぶと声色から流石にヤバイと感じ取ったのか。
慌てて脱走を試みようとする部下。オレは間髪入れず、その首根っこを掴み捕獲する。
「は、離せってばよー!」
「離せと言われて離すわけがないでしょーよ」
往生際悪くジタバタと暴れるナルトを片手に、オレは遼を振り返った。
「後はこっちでやっとくから」
「すみませんでした……」
「そんなぁ!ねーちゃーん!」
「ごめんね、ナルトくん。今回は庇えないよ……」
半泣きで謝る遼。
オレは「気にしなくていーから」と彼女の頭をポンと撫で、ナルト(元凶)を引き摺りながら店を出た。
▽「インディゴの糸を解く」本編中のお話
仕事を終え帰宅すると、変わらず家にいるカカシ。その手には例の愛読本。
俺のエロ本にケチつける癖に、自分はどこででも開いて読んでるってんだから納得がいかない。
「カカシってエッチだよなー」
腰のポシェットを外しながら、当てつけるように言ってやると、彼はこちらを見、瞬きを二度してから視線を本に戻してページを捲る。
「スケベのお前には言われたくないよ」
「おま……、スケベナメんなよ。むっつりの癖に」
「オープン過ぎるのもどうかと思うけど」
「心の中でムフムフしてるより失礼じゃないぞ」
「なによ、ムフムフって」
「お前だ、お前」
睨み合うこと、十秒。
俺は机の裏に隠していた秘蔵のエロ雑誌を手に取り。
カカシは読んでいたイチャパラ(上)を閉じて、代わりにポシェットからイチャパラ(下)を取り出した。
「そろそろ決着を着ける時が来たようだーね」
「後悔するなよ」
「ふ……っ、どっちが」
今、オープンとむっつりの火蓋が切って落とされた。
▽「欠けた月の成れの果て」のお話
ものぐさと呼ばれる彼は、徹底してものぐさである。
六夜は決して自分では着替えをしない。
放っておけば、一日でも二日でも一週間でも同じ服を着ているだろう。
かと言って、当番の者が例え着替え一つ疎かにしたところで意にも返さない。六夜のことだ。そんなものだと通り過ぎるに決まっている。
それを思えば、この城の者たちは働き者であり、自らの仕事に忠実であるとも言える。
「失礼します」
護衛がてら城に潜入しているオレは、六夜の身の回りのこともしている。
今日は湯浴みを担当する日。
帯を解き、服を脱がせてから、風呂場に文字通り放り込む。そして、髪の毛、身体と洗い、湯船に浸し、出してからその身体を拭いて着せる。
変化し、体型も変えているとはいえ、これだけでもかなりの重労働。髪を乾かし結う頃には、疲労が程よく腕に来ており。
「っ、」
「あ」
びくりと揺れた広い背。
髪を纏めようと差し入れた指。その背でうなじを擦ってしまった。
「失礼致しました」
いんや、構わないよ。
そう返ってくると思っていたのに。
六夜はゆるりとこちらを振り返っては、薄く笑い小首を傾げる。
「エッチだねえ、猫ちゃんは」
「そう思うなら、脱着くらいご自分でなさってはいかがです」
しかし、彼は何も言わない。口元に笑みを浮かべたまま、ただ目を細めていた。
▽「刻が運命を告げたなら」のお話
椅子に座って本を捲るオレ。
その足元で、目の前のパックンをモデルに絵を描いている、画伯・結愛。
レディースどころか、キッズ服も碌に知らなかったオレのおかげで、今日も今日とてフリフリレースな服を着ているわけだが。
(あの服どうなってるんだろう)
特に背中に付いている大きなリボン。
可愛いとは思うが、どうやって結んでいるんだろう。というか、どうやって洗うんだ、アレ。
オレは心の中で首を捻る。
洗っても解けないものなのか。洗ったら解けるものなのか。はたまた、解いてから洗うものなのか。
仮に解けたらどうやって結べばいいのだろう。
そう考えるうちに、右手が自然とリボンに伸びーーー、
「!?」
触れると同時に、びくぅうううっ!?と肩を震わせる結愛。それはまるで、微睡んでいた猫の尻尾を踏んでしまった時のような反応で。
「あ、すまなーーー」
咄嗟に謝るが、覆水盆に返らず。
結愛は座っていたところから素早く立ち上がり、背中のリボンを押さえながらバッと身を翻らせる。
「カカシのお兄ちゃんのエッチ!」
「えっいや、その!大きなリボンがどうなってるのかなー、と思ってな?」
「言い訳はいりませんっ!」
「カカシ」
「すみませんでした」
むうっと真っ赤な頬っぺたを膨らませるちびっ子の隣で、パックンがさり気なく前へ出る。発動したパックン・セコムに、オレは即刻頭を下げた。
▽「毒の華は今日も笑う」のお話
アサヒは返り血を浴びたベストを脱ぎ、片手で持ってはパタパタと振る。
「灰と黒ってさぁ、割と目立つんだよねーぇ」
「血ですか」
「そ。いっそ全身赤にした方がいーんじゃない?」
「いえ、それはちょっと」
アサヒの黒髪には映えるかもしれないが。
いくらなんでも、暗部が赤の衣装を着て走るのはいかがなものかと思う。
(……ま、この女(ひと)なら躊躇わずに着るだろーけど)
なんなら、蛍光色でも着るかもしれない。
そんなことを考えている内に、彼女を凝視してしまっていた。オレの視線に気付いたアサヒが、唇に指を当て歯を見せてにぃっと笑う。
「カカシのエッチぃー、どこ見てんのーぉ」
「はぁ?」
つい素で返してしまった。
ベストを纏っていない彼女。ピタリとした黒の衣装は体の曲線まで伺えるわけだが。
「あっは!すっごい嫌そうな顔ー!」
「はい、嫌です」
「それくらい流せるようにならないとねーぇ」
自分でも分かる程に寄った眉根。
あからさまに顔を顰めるオレに対し、アサヒは愉快そうに踵を返した。