※跡部短編約束破棄の続きっぽくなってます
たぶん見ないとわからないかも








窓からずっと見ていた。私は、彼らを近くでみる権利はないから、でもせめて、ここからならいいかなと思って委員会で通い慣れた図書室から、景吾を見た。



"テニス部が氷帝と練習試合するらしい"
それを聞いたのは放課後で。

気づいた時にはもう遅かった。封じ込めていてはずの彼らへの、景吾への想いはどんどん溢れ出てくる。
わすれたはずなのに、傷つきたくはないのに、私の足はテニスコートがよく見える東棟の三階にある図書室に来ていた。



私、立海に行く。

そう決めて、逃げたのは私。景吾にいらないと言われるのが怖くて、誰にも言わずに外部進学した。マネージャー、やりたかったな、小さくつぶやいた。




見下ろしたテニスコートは、黄色と水色のユニフォームがボールを追いかけていた。懐かしい水色と白が私の視線を離さない。やっぱり氷帝が一番、なんて言ったらきっと同じクラスの幸村君に怒られちゃうと思うけど、私にとって氷帝は特別だった。今もきっと。


青い伊達眼鏡と赤いおかっぱはすぐにわかった。他のレギュラーたちも。
だけど、どこをみてもさっきまではいたはずの金髪に近い茶色は見当たらない。




「景吾、好き。」

伝えたことはなかったけど。なんでいないの、いつの間にか視界が涙でぼやけてきて、慌てて拭う。逃げた私には見ることすらもゆるさないらしい。景吾はテニスコートにはいなかった。いつだって、気品溢れる景吾が、でも誰よりも優しい景吾が好きだった。




その時、静まり返った放課後の図書室のドアが乱暴にあけられた音がした。



「バーカ、なんで言わねえんだよ。」




夕日によって暗くなったシルエットがそこにはある。私の視線は縫い付けられたようにその人から逸らすことができない。どうして、景吾がここにいるの。




「景吾…、なんで。」

「なんではこっちのセリフだろうが。
なんで、外部のこと言わなかった?」



彼の視線が痛くてようやく外せた視線をしたに落とす。その時に溜まっていた涙も、ぽとぽとと床へ落ちていく。理由なんて、聞かないでほしかった。それよりも、さっきの告白が聞かれてしまったのではないか、もう見ることもできないのだろうか、疑問だけがループして、顔を上げることができない。



「いや、お前を責めているわけじゃねえ。」

「え?」

「悪かった。
あの日、有海にあんなこと言うつもりはなかった。本当は部活引退したらずっと言おうと思ってたことがある。結局、言えなかったけど、俺様は生憎諦めが悪い。

有海、好きだ。」



優しく、ぎゅうと抱きしめられた。景吾の匂いが久しぶりに鼻を掠めて、ひどく落ち着いた気分にさせた。ああ、ここに景吾がいる。狼狽しているはずなのに、どこか穏やかだった。



「返事はさっき聞いちまったからなあ。」



やっぱり聞かれてたんだ、と思ったのに案外平気なのは景吾の口調が私を慈しむように語りかけていたものだったからなのか。アイスブルーの瞳が愛おしそうに細められて、ゆっくりと唇が近づいて、リップ音がなった。








涙にぬれた袖を絞りながらした約束は守れなかったね
末の松山を波が超えないように、決して心変わりしないように



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