※結婚




彼女は昔俺が可愛いっていった白い、まるで有海の心みたいに汚れのないウエディングドレスをきて歩いてきた。
薄く化粧が施された有海はほんとうに可愛くて幸せそうで俺の目は間違ってなんかいなかった、と思いながら待っていた。
少し、緊張しているのか、顔は若干強張っててでもそんなところでさえも好きだと思えてしまうから重症だ。今なにを考えているのだろうか、俺は君が好きだと伝わればいい。




俺と彼女の出会いは高校時代だった。それからかれこれもう7.8年にはなる。
始めてあった時から好きだった。ずっとずっと。
それでも反動形成で冷たくしたりして、泣かせたこともたくさんあった。本当は泣かせたくなかったのに、素直じゃなかったから。


好きだと伝えた時の有海の顔は一生忘れないだろうな。


「わたしも、すき。」

そう言って顔を赤く染めた有海に柄にもなく俺も照れたりして結局は似たもの同士だった。
いじめなんてものは俺がなくした。有海を傷つけるやつは許せなかった。高校時代も、今ももちろん。


大学は離れてしまったが俺たちの気持ちが離れることなんてなかったから、何度もお互いの住んでるところを行き来して、庶民の暮らしがわかんねえ俺に有海はいろんなことを教えてくれた。
一緒にスーパーにも行って電車にものった。有海は俺の生活の一部だった。


有海の始めては全部俺で、最初の苦しむ顔なんて見るに耐えなかったが、繋がった時の幸せは一入だった。俺の汚い過去を全て消し去りたいと思わせたのは後にも先にもあいつだけだ。

そう、俺を変えたのは有海だから。






友人からの祝福の言葉に漸く少し笑みを浮かべた有海は昔となにも変わらない。いや、歳を重ねてさらに美しくなったようにも見える。式場の花が満開に咲き乱れて、花までも結婚を祝福しているみたいだった。
そこにいる全員が笑顔で溢れていたのはきっと有海の人柄の良さだと思う。

出会った時より伸びた髪がくるくると巻かれて彼女の肩にかかっている。その上にはきらりと輝く髪飾りがあった。
それがまるでむかし有海が野原で作っていたシロツメクサの冠みたいでふいに笑みがこぼれた。

俺の思い出にはいつだって有海がいてそれはいつまでも変わらないのだろう。俺をこんなにも好きにさせたのはあいつだ。

でも、それを、言うことも好きだと悟らされることもできない。


だって、








「今日はきてくれてありがとう、跡部君。」

「当たり前だろうが。」




彼女は今日、結婚するのだから。


あの時有海の手を離さなかったら、一緒にアメリカにでも連れて行っていたら、今有海の隣にいたのは俺だったのかもな。
仕事というあまりにも大きすぎる壁が俺たちの二人を壊し、呆気なく終わりを運んだ。



幸せになれよ、

なんてまだ言えなかった。





(それを言うのは俺じゃない)




title.彼女のために泣いた様よりお借りしました。


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