はじめて見た時からずっと、お慕いもうしていました。




燃え盛る家は還らぬ君の面影ばかり、届け届け、天高く




景吾さんとあったのはお互い中学生の時の彼の誕生パーティーで、その時から既に彼は際立っていた。
主役としてステージにあがる彼も、挨拶回りで会場の中を歩く姿も異彩を放っていて、目が離せなかった。

私とは違う次元の人間だ。
そう思いつつも、好きになっていたのは私。

進藤の家はネームバリューはそこそこでも、あまり経済界の重鎮ではないことぐらいわかっていた。跡部さんと釣り合わないことも。

だから、本当におどろいた。
私と彼の結婚が決まったのは高校の卒業式の日で。





「有海、跡部さんちの息子さんと有海の結婚が決まったわ。」




卒業式から帰ってきて、呼ばれた居間で同じく政略結婚で父と一緒になった母が寂しそうに笑った。
今の私たちと違うところは父と母が政略とはいえお互いに愛し合っているところだろうか。

なんで、という疑問もあったが、驚きと半分くらいの喜びで私は頷くことしかできなかった。


私の大学卒業を機に、景吾さんとの関係が婚約者から夫になった。しかし気持ちは何も変わらなくて、私は相変わらず彼が好きだったけど彼は私なんか目もくれなかった。
それでも幸せだったあの頃。

そんな私はもういない。






無意識に左手の薬指に光る指輪を触わりながら、寝てしまっていたようだ。
使用人の人がかけてくれたらしい柔らかな手触りのいい匂いがする毛布が背中にかけられてた。

景吾さんからもらったと、喜んでいた指輪でさえも今はもどかしかった。どうせ、彼が買ってくれた物ではなくて、適当に誰かに買いにいかせたものなのだから。






"お前も本当に好きな人と結婚したほうがいいだろ"




結婚が決まった時に景吾さんが言った言葉がいつまでも私を縛り付けて、彼に対する気持ちを押し込めていた。


真夜中をさした時計の針をながめながら、今日も景吾さんは帰らないとためいきをついた。


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