(君のおかげでここまでこれた。
君のおかげで頑張れた。


だから―――、



忘れてほしい。

君の立場が悪くなるというのなら、
いっそ記憶を無くしてほしい。

君には、幸せな未来があるのだから。
僕とはちがって、幸せな。



さよなら、愛しの人

ありがとう、大好きだった)






























「―――え?」



みんなが死喰い人と戦っているとき、自分もそれに加わろうとしたウミは歩みを止めた。



1人が止まっても他は止まらない。

DAのメンバー、不死鳥の騎士団、みんなが戦っている。


命をかけて死喰い人とヴォルデモートに。




それなのに彼女は頭が割れるような頭痛で、しゃがみこんだ。








「…あぅ…。
セ、ブルス…?」





ウミは憎むべき相手の名をつぶやいた。



ダンブルドアを殺し、裏切った死喰い人の名を。

スリザリン贔屓で、嫌味ったらしくて、嫌いなはずの名を。





彼とは、授業でしか接点がなかったはずなのに。


スリザリンとグリフィンドールという相容れない関係だったはずなのに。









おかしい、何かが足りない―――。
この虚無感はなんだろう。







ウミの目から涙がこぼれおちる。


それは、魔法薬学の先生がダンブルドアを殺した日から、何故か何かがぬけおちたように空いたすきま。






それはまるで日常の一部が抜け落ちたような。



大切なものだと心が叫ぶ。
必要なものだと心が泣いている。




その時今までみたはずのない、映像が脳裏に浮かんだ。




それは、



















―――――思い出した。





『何故我輩の部屋に君がいるのだね』

『グリフィンドールは五点減点』

『こんなことも出来ないのか、君は』



『……君はわかってない
どれほど君が魅力的であるか』

『だ、だきつくでない!どうなってもいいのか!?』

『好きだ。君を、ウミを守りたい』






『今からお前の記憶を消す。

我輩に関する全てのことを。
これで今まで通りになるのだ、ただの生徒と教師に。
これがウミの幸せなのだ。
幸せに生きてくれ。たのむ、幸せに――…。


オブリビエイト』









私の記憶―――。







彼の忘却術は完璧だった。
ウミはセブルスのことを完全にわすれた。




彼と愛しあったことも――…。







そしてウミに残るはセブルスという最悪な先生が、ダンブルドアを殺したという事実。





しかし今ウミは思い出した。

完璧だったはずの忘却術が破られた。






「――セブルス…?」





理由は1つ。
嗚呼、彼は――――














死んだのだ。






「つっ…セブっっ
な、んで…!?」



ウミは泣き崩れた。

全て思い出した。



嘘であってほしかった。







――私が思い出したのは彼の忘却術が完璧じゃなかったせい。
それか愛は魔法を破る。
それも違うなら、セブルスが自分で取り消したんだ。





どれも違うと心の奥底では分かっていた。

けれど、信じたくない。





彼が、セブルスが死んだから魔法がとけたのだということを。








ねぇ、どうしてあなたは私の記憶を消したの?
ねぇ、私のこと嫌いになったの?


いくつもの疑問が生まれる。


しかしそれに答えてくれる人、セブルスはいない。
もう、いない。










「セブルス…。

私の記憶を消して、あなたは死んで、それで、本当に私が、幸せになれると思ったの?
それならセブは教師失格だわ。
何も分かってない。

私は…っ、あなたなしで…っ
幸せになんかなれない!

おいてかないでよ、1人にしないで。
約束だってした。
守るって言った。
なんで、なんで…


―――逝ってしまったの?」





泣きながら、言葉を何度も途切れさせながらウミは言った。





「っ好き。
あなたが好き。
忘れてごめんね。
ほんとに好きよ、愛してる。

だから戻ってきてよ!」








かからないまほう。
(本当はダンブルドアを殺す僕を幻滅されるのが怖かっただけだった。)


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