みんな泣いていた。私たちの青春は終わってしまった。普段は絶対泣かないであろう部長も、優しさでいっぱいのあの人も、いつも遊んでたくせにプレーはすごいあの人だって、みんなみんな、泣いていた。私は決めていて、去年の先輩の引退は泣いて泣いてこれでもか、と泣いていたから、今年こそは泣かないと宣言していたはずなのに、みんなが泣くからつられて泣いた。がんばったのは私じゃないし、何より悔しいのは選手たちだからというなけなしの理論は少しだけ残した。引退して、もうテニスコートに立つことはないのだと思うと目頭があつくなって目に涙がたまる。
雨がふって、涙を雨にみたててないてないフリをしてボトルを片付ける私の背中を、真田がぽんとたたいた。


「ありがとう、感謝している。」


そんなこと言うと泣けるからやめて、
これが私の精一杯の返答だった。彼はそれを聞いて心なしか笑った。ボトルを片付けたあと、引退する同級生も、後輩も、応援にきてくれた先輩も私に声をかけてくれた。特に、後輩のマネージャーの号泣ぶりをみて去年の私を思い出した。


嗚呼、私、引退するのか。


思ったのは、これから始まる受験勉強のことでも、部活がないから友達と遊ぶことでもなくて、ただ寂しい。もう前みたいにみんなとコートで笑い合うことはないのだ。それが無性に寂しくて悲しかった。


「おい有海、このあと3年で俺んちで引退パーティするって」


いつの間にか彼らの間で進められていたらしく、もう泣き終わってかすかに赤い目元の、ジャッカルが優しく声をかけてくれた。

帰りのバスは落ち込んでくらいわけでもなく、むしろどんちゃん騒ぎで、真田に怒られるほどだった。特に丸井と仁王がまだ泣いている赤也をからかって遊んでいた。何も変わらない、いつものメンバー達だった。

バスが学校につくと、3年はそのままジャッカルのいえに向かった。彼の家では既にお母様がたに、よって焼肉やらピザやら色々な支度がされていて、雨にぬれた彼らがお風呂にはいっている間に私もお母様がたの準備に加わる。


「今までありがとね。
大会前にもらったお守りすごく喜んでたの。有海ちゃんには本当に私達感謝きてるわ。」


そこにいるお母様がたは、私にいっぱいお礼を言ってくれたけど、本当に言わなきゃいけないのは私の方だ。私こそみんなにたくさんの思い出を作らせてもらったのだから。ありがとうございます、と口にすると少し驚いてそして彼女らは優しく微笑んでくれた。私はメンバーもそうだけど、彼らのお母様がたも大好きだ。

引退パーティーという名の騒ぎはお昼すぎから夜遅くまで続いた。みんなでゲームをしたり、話していたらあっという間に過ぎて行った時間が私たちの仲を表していたように思う。すごく楽しくて、感じたのはやはり彼らへの愛だった。

そのままジャッカルの家に泊まる人を除いて、帰る組が支度を始めたころ、いましかないと、私は口を開いた。



「今まで、ありがとうございました!
喧嘩?もしたけど、毎日がすごく楽しくて、ほんと部活もみんなも大好きです。
使えないマネージャーで、いっぱい迷惑かけたけど、私はこのメンバーのマネージャーをやれて本当に幸せだったなって思います。
たくさんの思い出をつくらせてくれて、どれもが大切で、忘れられない日々を過ごさせていただきました!
これからも、学校とかで会うのでよろしくお願いします!!
いろいろありがとうございました。」


これが私の本音だった。嘘偽りのない、全ての気持ち。



(彼らの笑顔が見えた)



title確かに恋だった
よりお借りしました。


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