私の知らない君が確かにいて、そんなところも私はすごく好きだった。ペテン師だなんて、周りは言ってたけど、私に見せる笑顔だけは本物だって思い込んでいた。その声も仕草も、嘘なんかじゃない。そうまた思えたらどれだけ楽だっただろうか。

緩やかに落ちていく赤と黄色の葉っぱが、もう戻れない私みたいだと思った。落ちた葉っぱは、路上でみんなに踏まれ、変色していて、せめて私だけはと、それを避けて歩いた。秋が終わった。仁王くんみたいな真っ白な雪が埋め尽くすのをいつか一緒にみたいね、なんて笑ったのをふいに思い出してしまった。



「好きじゃ、付き合ってくれんか。」

「手をつないでもええか。」

「ほんと、お前さんは可愛いやつじゃのう。」



消えてくれない私の中の彼が私を苦しめている。知らなかったのは私だけだったのだ。
私は泣かなかった。だから、きっと彼も私が気づいてるなんて知らないだろうね。騙し返すなんてできないからせめて知らないふりをし続けた結果。



「有海なんて、好きじゃなか。」

「うん、知ってたよ。
さよなら。仁王くん。次はちゃんと愛してあげてね。」


最後に、私はちゃんと彼の嘘を暴けたのだろうか。


結局のところ恋でも愛でもなかった
(彼にとっては、ね。)




title.彼女のために泣いた様よりお借りしました。


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