私はずっと孤独だった。
景吾にカナさんがいると知ったときから、ずっと。
「有海聞いてくれ。」
「いやっ!もう十分でしょ?
どうせ、好きなのは私だけ。
景吾は私のことなんてどうとでも思ってないくせに。」
「有海っ!」
景吾は、強く私を抱きしめた。
今までの仮初めとは違う、欲望を通すかのように強かった。
「あいつのことは確かに好きだった。
だけど、もう終わったんだ。
あいつが家を出ていったとき、そんなもんかと思った。
結局俺から離れていくのだ、俺たちの気持ちは簡単に壊れるものだったんだ、とそう思ったらどうでもよくなった。」
「う、そ。
だって、カナさんと会ってるじゃない。」
「それは、偶々だ。もうお互いに愛情はない。
なあ、どうしたら俺を信じてくれる」
スローモーションのようにゆらり揺らめく双眸と目があった。
いつも自信に満ち溢れている彼の瞳が、今日、今だけは違って見えた。
私を捉えて離さない、景吾の瞳は彼そのものので揺らいでいても好きなままだ。
「今までが悪かった。
カナとも連絡を断つし、仕事がおわったらすぐに帰る。お前がしたいということを全部叶えるから。
家に帰ろう。」
私は彼の差し伸べた手をとった。
「ふと、去年を思い出して、有海だけはいくら俺が冷たくしても離れなかったことに気づいたんだ。
そしたら急にお前が愛おしく感じて、早く仕事を終わらせて帰ったら、お前がいない。
なのに、あったのは暗い部屋だけだ。
俺のこの気持ちがわかるか。」
「ご、ごめん。」
「いや、悪いのは俺だな。
今までお前に気持ちを伝えてこなかった。
政略結婚とはいえ、俺はおまえを愛してる。」
不安は消えた。