悪いのは俺だよ。
君を信じることができなかった。





真っ白なシーツの上で、当たり前だけど身じろぎ一つせず今日も有海は眠っている。
時折聞こえる鳥の声と、無機質な機械音、そして耳をすまさないと聞こえない有海の寝息でしか俺は彼女が生きていることを実感できない。

それほど、動く彼女をみていないとも言える。





でも俺はいつまでも覚えているから。君の笑顔も、そして、全てを諦めた君を。
俺の手を有海はとらなかった。それが答えなんだと思う。
きっと君はもう俺のことなんて見たくもないと思うけど、せめて、それだけでいいから、謝らせてほしい。


ごめんね、有海。
信じてあげられなくて。

もう一度会えたならちゃんと言おうと思うんだ。



好きだよ。







有海を追い詰めたあの日から、ちょうど二年がすぎても何も変わらないことに俺はきっと焦っていた。
だから、いつも聞いてと話しかけても本当は通じてないとわかっていたけど、俺は取り乱した。


テニス部はみんな泣いていたけど、俺も泣いた。まだ、彼女は赦してはくれないみたいだ。






そして今日も俺はただ当たり前のように有海のいない学校に行き、授業をうけ、テニスコートをみないように学校をでて病院へ向かう。
いつもと変わらないその日もそうだと思っていた。

顔なじみになっている病院の看護師とすれ違った。もう二年も通っている。
なるべく大きな音を立てないように3回ノックをして、ドアを開けた。


まず目に入るのは、ドアの前の大きな窓で、そこからは病室の付属の大学のサッカーコートがみえる。
そして、俺はいつものように窓から目を離してゆっくり視線をベットにうつした。


しかし、いつもと違うのは、ねむる彼女はそこにいなくて。
















「どちら様ですか?」




有海は目を覚ましていた。
しかし、彼女はなにも覚えていなかった。







会いたかった。ずっと。
(その時思ったのは、君の記憶がもどらない方が幸せなんじゃないかということ。)


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