私の愛した人は、他に愛する人がいるらしい。
私と景吾が結婚して今日でちょうど二年になるけど、過ごした時間と比例して仲が深まることはなかった。
所謂政略結婚というやつでいま一緒に住み、夫婦関係を続けているこの人を私はすごく好きで愛している。
私は愛されていないけど。
彼に幼馴染がいてお互いが想いあっていたと聞いたのはいつだっただろうか。
景吾の元チームメイトと名乗った忍足さんが家に遊びにきたときにわざわざ景吾のいないところで教えてくれた。
「かわいい子やったわ。ほんまに跡部とお似合いで、跡部と結婚するんはあの子しかおらんと思っとった。」
私の存在を否定するかの言葉に、私は何も言い返せなかったし、私が彼を幸せにすると言い切ることもできなかった。
ただずっと曖昧に笑った。
「なんやったっけ、有海さん?との結婚が跡部んちで出てきたとき、あの子突然姿を消したんや。
有海さんがおらんかったら、今頃二人は楽しい夫婦生活をおくっとるんやろうな。」
ごめんなさい。
言うべきはずの人に、まだ私は伝えられていない。
2人がどれだけお互いを愛し合っていたかなんて知らないけど、言えるのはただ一つ、要らないのは私だということ。
そして今、景吾は想い人を見つけたらしい。
昨日くらいから慌ただしく鳴る彼の携帯からは柔らかい女の人の声が漏れていた。
きっと今日景吾は帰らない。
今しかないと思った。
この想いがなくなることはないと思うからこそ、彼女が現れた今、邪魔者は消えよう。
そうしたら、2人は幸せになれるのでしょう?
今度は、私が消えるから
(今まで景吾をありがとう)