だれかが私を呼んでいる気がした。


おきて、有海。

確かにそう聞こえたけど、私はもうどうしたら目をさませるかなんて忘れちゃって、どうしようもないよって目を閉じた。






おきて。ねえ、おきてよ。



毎日のようにきこえるそれに、私は覚えがあった。
時々まざる楽しそうな声も、すべて私は知っていた。

私をいじめた彼らは今、とても後悔しているらしい。




「まだ有海は許してくれない?
ごめんねごめん。信じてあげられなくて、いっぱい傷つけて、言葉でも行動でも俺たちは追い詰めてしまった。

ねえ、有海。
そろそろ、おきてよ。
いくらでも謝るから、君が死ねというならその通りにするから。




だから、目を覚ましてよ。」




でも、あの日、私が彼らを縛り付けていると感じたとき、私は自分の力でおきて解放してあげようと思った。
苦しんでいるのは私じゃない。
あれからずっと精市も佳奈もみんな、背負って生きているんだ。





決めた。もう、逃げるのはやめよう。
結局私は眠る前も、おちたときも彼らから逃げていただけだけど、今回こそ逃げないから。


今までありがとう。
もう、解放してあげる。






その夜、少しかけた満月がのぞくこの部屋で二年ぶりにわたしは目を開けた。






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