本当はだれより大好きだったよ。




有海はどれだけいじめられても、辛い思いをしてても、その元凶であるわたしを恨まなかった。
でも、媚びて、ご機嫌をとろうとすることもなかった。


ーーねえ、私ね、有海のこと好きだったよ。
嫌われて、嫌われて、私しか見れなくなればいいのにって思ってたんだ。




最初は、テニス部に囲まれてる有海をみて取られた気になって、この人たちをどうにかして有海から離したいと思った。


「じ、つは、
ずっと有海にいじめれてて、
怖くて、精市たすけて」


そのためにはいっぱい汚い手も使ったし、有海の視線の先にいつもいた幸村精市とも離したけど、有海は私に縋ることもなかった。


そのうち、どんどん取り返しのつかないことをしてるって、分かってたけどとめられなくなっていった。
有海死ね。なんて、いうつもりじゃなくて、でもそれに対してのごめんね、でもう元には戻れないんだってわかった。





有海が落ちていくとき、彼女は精市の手をとらなかった。それがまるでもうこの世にいたくない、という有海の意思のような気がして、そこまで追い詰めた自分こそ、ここから落ちるべきなんじゃないかと思った。






「ごめんなさい。」


有海は、屋上のしたの立ち木が緩衝材となってなんとか一命を取り留めたらしい。
全国大会のかかったテニス部だったから、学校はこのことを有耶無耶にした。




私はテニス部にすべて告白した。自分のしたこともすべて。
そうでもしないと有海を落とした罪悪感で私が死にそうだったから。
赤也は騙された、とか言ってたけど、他の人は私に対して怒ることもなかった。



「有海を信じなくて、結局あんなことになったのは、俺たちの責任だ。」

特に精市は、誰よりも自分を責めていた。
彼は、有海を好きだったから。
好きなのに信じなかったのを許していない。


精市は大好きだったテニスを辞めた。


「有海を傷つけたこのラケットもテニスボールも、勝手な言い分だけどもう見たくないんだ。」

そう言った精市は、やつれていた。
私にはどうにもできなかった。









有海は目を覚まさない。
外部にも内部にももう影響はないほど回復したのに、彼女はもう生きることを放棄したかのように眠りからさめなかった。





ずっと親友だね。
そう言ってもう笑うことはないのだろうか。


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