「お前に俺たちの何がわかるんだよ
たかがマネージャーの分際で」
わたしたちの三年間はなんだったんだろうとか、高等部でずっとみんなのこと支えてたかったなとか、いろいろ溢れてきたけど、最初にでてきたのは今まで部員に見せたことのない涙だった。
桜の咲き始め、一年目の春、入学式で派手な挨拶をかました跡部景吾にわたしはマネージャーに誘われた。最初は俺様で言葉遣いが荒い景吾に苦手意識を持っていて、景吾もそれを知っていたけどあえてわたしを誘ったらしい。
「俺に媚びないやつを選びたくてな。
それにお前は仕事をよくやりそうだから。」
そう言って、仲の良い人にだけみせる柔らかな笑顔で笑った景吾にこの三年間わたしは少しずつ、そして戻れなくなるくらい好きが溢れていった。
引退するまで、気持ちは伝えないつもりでいたし、引退しても言えないかもしれないとは思ったいたけど、こんな形になるなんて誰が予想してただろうか。
青春学園に負けたその日、誰も景吾にかける言葉が見つからなくて、ようやくふりしぼったわたしの一言はどうやら彼の逆鱗に触れたようだった。
「ごめんね。」
震えた声でうつむきながらようやく出した一言のあと、わたしは走って彼のもとを去った。
これ以上嫌われたくなかった。
それからは徹底して景吾を避けて毎日を過ごしたし、テニス部ともあまりしゃべらなくなった。
そしてーー
あの夏から半年すぎて、冬も終わりかけたその日私たちは卒業した。
景吾。私、言わなかったけど外部受験したんだ。もう会うことはないと思うけど、好きだったよ。その声も仕草もいつのまにか全部。
信頼されてたんじゃないかっていうひとりよがりは空虚にきえて、一緒にいた時間より避けた時間のほうが思い出せるようになったけど、今でも思うのは、
「お前がマネージャーでよかったと思うぜ?」
景吾の言葉ばかりだった。
私がいなくなって、景吾は何を思うだろうか。何もわかってないマネージャーでごめんね。
私のいないところで中等部の時には作らなかった彼女とかもいっぱいつくってまたあの自信いっぱいの顔をするんだろうな。
願わくはそこに、隣にずっといたかったよ。
約束は破ってしまった
(高等部でもマネージャーって約束したのは覚えてるけど、叶えられそうにないね。)