社会に出てから二年。
そしてできた年上の恋人。
ある程度忙しい部署の私と、企業の社長なんて大層な肩書きの彼。
同じ日に休みを取れることなんて全くと言っていいほどない二人の逢瀬は、いつも深夜の密室コースだった。
車の助手席に身を沈めて、最初は居酒屋。
そうすると彼がお酒を飲めないことに気付いた私の余計な提案で、その次からはホテルか彼のマンションか、はたまた私のアパートか。
一緒に食事を食べてただ抱き合って眠る日もあれば、一緒にお風呂に入って二人でのぼせてフラフラになったこともある。
泣いてしまうほど激しいセックスもしたし、体温をうつしあうような優しいセックスをしたこともある。
全部大切な時間だけれど、例えば彼と二人で朝から晩まで、学生みたいにデートできたらなんて素敵なんだろう。
そんなことをポツリと零した一週間前、彼は一瞬見開いた双眸を優しく細めて、「Okey,来週の日曜、二人でどうにか休み取ろうぜ」と言ってくれたのだった。
普段とは違う自分の姿を何度も鏡で確認する。
ベージュのプリーツスカート、細身の黒いニット、少し高さのあるヒール、丁寧に巻いた髪の毛、少し華やかな化粧。
そして彼にもらったネックレス、職場には派手なお気に入りの腕時計とバングル。
ドキドキしながら彼との待ち合わせに胸を躍らせる午前九時。
プランは政宗さんに任せてある。待ち合わせは午前十時。
「…用意は済んだか?」
「え、あれ、いつの間に?」
「さっき」
笑いを含んだ声色で背後から降ってきた低い声。
振り向いたらそこには、恋人である政宗さんが立っていた。
「…デートっぽく待ち合わせね、って言ったじゃない」
「Ah...落ち着かなかったんだ。それより、…デートっ"ぽく"じゃなくて、デートだろ」
バツが悪そうに後ろ手で頭を掻く政宗さん。
いつもみたいなくだけた私服もいいけど、なんかやっぱり違う雰囲気を纏って、思わずぼーっとしてしまう。
「…何見惚れてんだよ」
「うん…ごめん」
素直に頷いたら、今度は少しびっくりした顔。それもすぐに元に戻って、かと思ったら少しだけ顔が赤くなった。
「…お前も、…かわいいぜ?」
ダメだ。デートどころの騒ぎじゃない。
「…反則でしょ、今の」
「それを言うならお前もだ」
普段はつなげない手を繋いで、腕を絡めて、「この人が私の恋人です」って堂々と歩くんだ。
今日一日を思うだけでこんなに嬉しいの、どうしてくれるのよ。
もう一度恋をする
「初デートね」
「そうだな。…まずはベタに映画でもいかがですか、Honey?」
恭しく差し出された手のひら。
この赤い顔から熱がひくまで、もう少しだけ待ってね。ダーリン。
Thanx.10,000hit.
by six.