秘密の恋をしています。片想い歴2年、想いが実って半年。相手はクラスの担任で、片倉先生といいます。

他の先生はもちろん友達にも内緒。片倉先生は少しだけ頑なで、頭が固い。前に「固いのは下半身だけでいいと思うよ」とポロッと言ったら、苦虫を大量に噛み潰したような顔をして「どこでそんなセリフ覚えた」と叱られた。

見た目はヤクザ、中身もほとんどヤクザ。とか言うと少し落ち込むから言わないけど。
でも片倉先生はいつだって優しいし、あたしたちのためにいろんな努力をしてくれてる。

そして、女生徒に、人気。


「片倉先生は彼女いるんですか?」

「てめーらにゃ関係ねぇよ」

「えー!いなかったらあたし立候補!」


片倉先生がいる場所にはいつの間にか女の子が集まる。
わかってて先生のとこに来たあたしも大概バカだけど。

プリントを挟んだノートの端をぎゅうと握って、ためいき。最近少しイライラする。

「彼女がいる」って言ってくれたらいいのに、とか。
あたしがいるんだから近寄らないでよ、とか。

子供らしいワガママな独占欲とか主張とか、ごくんと飲み込んでその人だかりに背を向けた。

あたしだって、片倉先生のこと好きだもん。


「ねー!片倉先生って巨乳好きでしょ?」

「あぁ?何言ってんだ」

「あたし最近カップ上がったの!」

「知るか」


背中で聞く片倉先生の声はなんだか嬉しそう。
…男の人だもんね、おっぱい好きだよね。
おもむろに自分の胸に手を当てる。
小さくはないと思うけど、大きくもない。

片倉先生はあたしとエッチしてない。
「最後までヤんのは、卒業してからだ」って、やっぱり頑な。
胸さわったり、舐めたり、下も、触ったり、指いれたり。
そこまでするなら一緒じゃないかなって思うけど、先生的にはそうじゃないらしい。
あたしにも触らせたり、舐めさせたりするのにね。

男の人ってわかんない。


「ねぇ!あたしもう一つカップ上げたいんで先生揉んでくださーい」


「わたしもー!」ってはしゃぐ女の子たちの黄色い声が耳に痛い。


「…俺も男だからな、そんなん言ったら喜んでもらっとくぜ」


ため息混じりの先生の声。
…なにそれ。

ノートの端を握りしめたまま廊下を歩く。早くあの声が聞こえないところに行きたい。

あたしって、先生の恋人じゃないの?

そんなことを考えたら、泣きそうになった。


教室の扉に手をかけた丁度その時頭上から響いた予鈴。バタバタと教室に入る足音。それに紛れてあたしも教室に入る。

日課表を確認したら、次は片倉先生の授業だった。


「…あたし、頭痛いから保健室行くね」


こんなとこでまさかの仮病。一回も休んだことのない片倉先生の授業。でも、いやだ。今先生の顔見たらきっと泣いてしまう。

男の人だから仕方ないって、そんな風に思えるはずない。


一度座った椅子から立ち上がって友達にそう言えば、友達は心配そうに「付き添おうか?」と言ってくれた。それに「大丈夫だよ」と返して扉まで歩く。

その時いきなりガラリと開いた扉にたじろいだ。


「…姓、何してんださっさと座れ」


目の前にいるのは、片倉先生。
胸がズキズキ言ってる。モヤモヤして、喉がごくんと動いた。飲み込んだのは唾か文句か。


「…頭、痛いんで保健室いきます」


さっと先生から視線を外して足を踏み出したら、先生が「大丈夫か」と声をかけてきた。

"先生らしい"セリフ。どうせみんなにも言ってるくせに。


「…先生にはあたしのがあるんだから、いらないでしょ!」


思わず口をついて出たセリフに、クラスの中が「何の話?」と騒ぎ出す。
そのまま教室を出て保健室に飛び込んだら、目から涙が出てきた。


「どうせ、わかんないもん」


保健の先生がいないのをいいことにボロボロ泣いて、文句を吐く。

そうだよ、あたしが先生に言ったのだってきっと先生はなんのことだかわからない。

所詮、その程度。


もそもそとベッドに潜り込んでカーテンを仕切る。カラリと音がして戻ってきたらしい保健の先生が「大丈夫?」と声をかけてくれたのを無視して目を閉じた。



どのくらい寝てたのかはわからないけど、ふと目が覚めたのはなんとなく手があったかかったから。

薄く目を開けたら目の前にはあたしの手を握る片倉先生がいて、それだけでなんかもう、どうでもよくなってしまうくらい、




先生が好きなんです





こんなあたしじゃ、ダメですか?あたしの目が覚めたことに気づいた先生がくしゃりと困ったみたいに笑う。

アヒル口で無言の抗議をしたあたしに先生は、優しくおでこにキスをして


「悪かったよ、…触りてぇって思うのは名だけだ」


って。

意図をわかってくれたのは嬉しいけどなんとなく腑に落ちないのは、あたしが子供だからでしょうか。ねぇ、先生?


by six.



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