酷く空気の淀んだ室内、大量の爆薬が活躍を待つ木箱が整然と並べられたその倉庫の隅、空の木箱の上に男女二人が重なっていた。


「うぅ、あ、!」

「卿はやはり、欲望に忠実であるな。結構なことだ」


男は女の溶けた蜜壷にその武骨な指を2本挿し入れたまま、しかし女が欲しい場所に快楽を与えることなく抜き挿しを繰り返す。


「んっ、あ、あっ」


ぎゅうと瞑られた女の瞼は羞恥と快楽に震え、男の口許はさも楽しそうに歪められたまま。
男は指をぐるりと回し、蜜壷の入り口程度までゆっくりと抜いた。
女が浅い息使いで肩の力を抜けば、男は親指の腹で肉芽を捏ねてみせる。


「あぁっ!んぅ、あ、」

「この液体はいつになったら枯渇すると思うかね」


男は特に気にした風もなく親指で肉芽を潰す。返事を求めているわけではないらしく、その証拠に女の口から紡がれるのが返事でなくても別段気を悪くしたようなところは見えない。


「あ、あ、ん…っ、なんで、」

「…気を遣ってしまってはつまらぬ」


女の腰が微かに揺れたのに男は目ざとく気づいた。
事も無げに肉芽から親指を離した男は、今度はばくりとその普段は上品は口で女の肉芽を食らうようになぶり始める。


「ひゃあっん!」


舌先で肉芽を撫でるように舐めたかと思えば、形の良い前歯を軽く当ててやる、少しすぼめた唇で吸ってやればそこからは粘り気を帯びた水性の音があがった。


「ま、つながさまぁ…っ!」

「…言ったであろう、気を遣ってしまっては詰まらぬ、と」


女のその白い喉が跳ねるのを視界に捉えた男は、容易く女の肉芽を解放した。
下唇から顎にかけてを汚す透明の液体を手の甲で拭い、そしてまた手の甲に舌を這わせる。


「な、にを」

「美味、とは言い難いが仕方あるまい」


蜜壷に浅く入れられたままの二本の指が、彼女がほんの少し身を捩るだけで僅かながらにそこを擦る。
男は更に大きく口角をあげ、一気に指を突き上げた。


「ふあぁっ!…ん!」

「実に素晴らしい身体だ」


粘着質な音が規則的に響く。
この男は風流や美しいものを愛でる高尚な趣味を持っているが、見た目の細腰に似つかわしくなく大層な持久力と筋力とを持っているようだ。


「…ぁ、あっ?」

「……どうかしたか」


女の語尾が上がったのを聞いて、男は普段とは掛け離れた甘い響きを以て尋ねる。


「い、え、あの、」

最奥と手前とを、気を遣らぬ程度に辱しめていた男の指に、きゅうと力が籠る。


「言いたくなければ結構、これで終わりにするとしよう」

「松永さまっ!……あの、」


そうは言ってもこの男、今だ指は規則的な律動で女を追い詰めている。
いつか男が「気を遣る寸前で放り出されては、さぞかし辛いだろう」と独白のように呟き、まさに放り出された経験のある女は一瞬目を剥き、そして気まずそうに口を開いた。


「あ、の…!これ以上は、やめてください…!」

「物事を通すならばそれなりの理由が必要だ」


女の蜜壷からは男の指によって淫猥な濡音が上がり続けている。
殊更に指を締め付け、女は男から目を逸らして小さく言った。


「出、ちゃい、ます…」


その呟きに対して何がと聞くような無粋な男ではない。
男は瞬時にそれが意味するものを理解し、そして予告もなく指を引き抜いて自らの赤黒く張り詰めた昂りを蜜壷に押し込んだ。


「ぁあっ!あ、んぅ!は、」

「クッ、ククッ…、まぐわる最中に失禁か、卿はことごとく私を飽きさせないな」


肉と肉のぶつかる音と、より一層濃さを増した性の香り。
男が身を引き、再び細腰を押し付ける度に揺れる豊満な胸は桜色に淡く色づく。

女は眉根を寄せて、苦悶の表情を浮かべながら嬌声をあげるが、男は何を思ったか女の下腹に手を伸ばし、舐めるように撫で始めた。


「ひっ…ぅ、あ、松永、さ、ま…!」

「私の与える快楽に忠実な身体だ、褒美をとらせよう」


男が女の下腹に力を込めた瞬間、女の膣は大きく収縮して男の雄を締め付ける。

女の背が逸らされ、その白い喉が顕になると同時に男の下半身をも濡らした生ぬるい感覚に、男は短く息を吐きながら自らを追い詰める律動を深くした。
その度にさらりとした液体が音を立て、飛沫を飛ばす。男の腹を、女の腹をその飛沫が汚していく様を、男はまるで舶来物の茶器でも眺めるように、うっとりとした表情で楽しんでいる。


「やあぁっ…!ぅ、あ、ん!」

「この次は、緊縛でも試してみるかね」


子宮口を突かれながら女が気を遣れば、男は女の腰を更に引き寄せ全ての白濁を注ぎ込む。


「私が抜いたら、ここに力を込めておけ」


雄を穿ったままの恰好で女の秘裂を撫でる指に、女が浅い息で返す。
男は満足そうにだらりと力を無くした雄を引き抜き、女の足を閉じた。





螺旋より円環への回帰






閉じられた足の間、木箱と女の腰の間に男は手のひらを差し入れた。
その手のひらにとろりと落つる液体が自らの白濁であろうと、男は息も絶え絶えの女を見やる。


「卿は、余程逆さ吊りにされたいと見える」


狡猾でいて悪戯な笑みを浮かべながら女の腰と胸、頬を撫でる柔らかな手つきに、女は瞼を伏せていつも通りに口を開いた。


「…どうぞ、お好みに、」


そして瞼を伏せた女は今更ながらに、爆薬の鼻をつく臭いに不快そうな表情を浮かべたのであった。





ごめんなさい
by six.



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