「Hey,退きな」
「こっから先は通さないよ」
互いが互いを睨み合う。珍しいことに隻眼の男の周りに人は居なかった。大方、また黙って出て来たのだろう。一国の主ともあろうものが。
「別に少しくらいいいだろ?」
「その少しで旦那が発狂するんでね」
「真田は相変わらず初なんだな。どうにかならねぇのか」
「人の恋路に首を突っ込むのは悪趣味なんじゃない」
俺様的には竜の旦那が彼女に会うくらい別にどうでもいいんだけど。どうせ門を隔てた逢瀬になるだろうし、間違いが起こるわけじゃない。言葉を交わす彼女も満更でも無い様子だった。問題は旦那の性格上、それが許されないということだ。
「頼むよ、今日は旦那がいるんだって」
「ライバルがいる方が楽しいじゃねぇか」
そう言って楽しげに細められる左目。勿論困るのは俺様の立場。安月給がまた減ってしまう。
しかしそんな俺様の悩みなんて露知らず、竜の旦那はあろうことか再び馬を走らせた。
「Ha!もとからお前の言い分なんて聞く義理はねぇんだよ!」
砂埃にまみれて
「Hey,名!会いに来てやったぜ」
「あら、政宗さま」
「ままま政宗殿!如何様で参った!?」
「Ah?決まってんだろ、名と逢い引きだよ」
「な、…!」
「ふふふ、政宗さまも物好きですこと」
「佐助ェェ!佐助はどこでござるか!」
もう今月の給料は諦めました
by eight.