「身長、そこそこ」


畑からの帰り、恐らく庭に脚ぶらつかせて縁側に座っているだろう女のことを思うと自然綻ぶ口許。
捲くれあがった着物の裾から大胆に零れる脚も、注意するだけ無駄なのでもう諦めた。
俺にできるのはその脚に見惚れる野郎共を片っ端から呼び出すことだけだ。


「Hum...あとは?」

「細くもなく、太ってもいない」


その女が、今日は一人でないことに少しだけ落胆しながら、そろそろと気配を隠して縁側に近づく。
声と独特の話し方から、共に縁側に座るのが我が主だということを理解して、更にその会話の内容に聞き耳をたてる。


「胸は、…ない」

「…あぁ、ねぇな」


…何の話だ。


「どうしたら大きくなるの」

「そりゃお前、揉まれりゃでかくなるんじゃねーか」

「揉まれればでかくなるのか」

「Ah...あとはTechniqueだな」


……何の話だ。


「そっか、…じゃああたしの胸が育たないのは小十郎のせいだな」

「なんだよ、なんだかんだ言いつつもうそんな関係か」

「そう。かわいそうで」

「同情で抱かれたのか」

「だって隣の部屋で一人で抜いてた」

「……」


………なんの、話、だ


「だから、まあ小十郎だし」

「あぁ」

「好きだったし、ね」

「……で、飛び込んだわけか」

「そう。着の身着のまま」


右手に握ったままの鎌を見て、今すぐにでも飛びかかりたい衝動に駆られる。
あの二人は何を話している。
考えても答えは出ない。当たり前だ。というより考えたくもない。


「そうか、小十郎とお前がなぁ…」

「でも胸は育たないし」

「女の価値は胸じゃねぇ」

「じゃあ政宗は貧乳が好きか」

「いや俺は巨乳が好きだ」

「裏切り者!」


この爽やかな陽気の下、我が主と恋人は一体何をそんな真剣に話しているんだ。
俺は畑仕事で疲れてるんだ。これ以上疲れさせないでくれ頼むから。

出るに出れない状況下、俺はさっさと縁側の二人に声をかけておけばよかった、と後悔していた。


「まあでも、いいいんじゃねーか」

「何が」

「小十郎はお前のことが好きだってことだろ。You see?」

「ヘタクソだけどな」


……よし、

とりあえずこの女黙らせよう。





昼下がりの災難





「で、小十郎はそんなとこで何してんだ」

「知ってるか小十郎。小さい女が好きな男はナニが小さいらしいよ」


………よし、

旅に出よう…!



by six.



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