「佐助さん佐助さん!」
「なに、どうしたの」
「匿ってください!」


余程一生懸命走ってきたのか、着物の裾は着崩れてひらひらと揺れている。耳の後ろで纏めた髪もはらはらと肩に落ちていた。
遠くからは旦那の叫び声、彼女から漂う甘い匂い、…成程。


「旦那のおやつ、食べちゃったの?」
「……」


無言は遠回しの肯定。俺様は一つ小さく溜息を吐くと、手近な部屋の襖を開けた。


「おいで」


彼女が部屋に踏み込んだのを確認して襖を閉める。空き部屋で家具が一つもなく、隠れられそうな物は何もない。仕方無い。畳を蹴って天井の板を一枚外した。


「え、ちょっ…!」
「しっかり掴まっててね」


彼女の腰に手を回してぐいと引き寄せる。自然と近くなる距離に真っ赤になった彼女がかわいくて、知らず知らずのうちに口角が上がってしまう。狭い天井裏に登ると突然の真っ暗闇にくいと服の裾が引っ張られた。


「名ちゃん?」
「…さすけ、さん」



Oh,My girl!




「名殿ー!隠れても無駄でござるぞー!」
「(団子一つで…旦那もまだまだ子供だな)」
「あの、佐助さん、もう大丈夫です」
「えー自分から誘っといて何も無し?」
「え、誘うって、あの、……っ!」
「…みたらしの味がする」
「…!」




by eight.




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -