即効性の愛のかたち。
遅効性の愛のかたち。

どちらを選んでもそれって残酷だよねぇ、そう零した高い声色が退屈そうに揺れる。


「Hum...テメェは、どうしたいんだ」

「さあ、どうしたいんだろうね」

「殺したいんだろう」

「そうね、殺したいかもしれない」

「死にたいか」

「そうね、殺してくれる?」


取り留めなく続く会話。
ぼんやりとした横顔、さらさらと風に流れる黒髪。
細い首筋、白い手首。

さほど高くない城壁に座ってこちらを見下ろす彼女は、いつにも増して退屈そうだ。


「何がそんな退屈なんだ」

「何が、何かしら」

「Ah?聞いてんのは俺だ」

「天下取りに必要なのは何かしら」


またこいつは。
兜を地に置いて見上げれば、彼女は微かに笑ってみせる。

先日の戦でこいつに斬られた腹が疼く。


「やっぱり政宗は、兜がない方がいいわ」


タン、と鋭い音のした方を見れば、城壁の足元にクナイが3本刺さっていた。

あたし、今日はそれしか持ってきてないから。

そう言って手のひらをひらりと翻す。
その指先に似つかわしくない白い薬包。


「それは、どっちの愛だ」

「フツーの薬よ」

「嘘つけ」


ふふ、組みなおされた足。
戦場で舞う影そのままの白さに少しばかり苛立つ。


「誰かさんが」

「……」

「お腹痛いらしくて」

「…じゃあさっさと帰れよ」


そうするわ、小さく呟いて城壁の上に立つ身体。
首に揺れる赤い紐は、いつだったか「飼い主に結ばれたのよ」と言っていた。


「またね」


城壁の向こう側に一瞬で消えた背中と、そこからふわりと風に乗って俺の足元に落ちた先ほどの薬包。

それを拾い上げ、疼く腹に手を当てた。





Sweet Drug & My Pain






「なぁ、小十郎」

「は、」

「これ、何の薬かわかるか?」

「あぁ、…これは匂いが独特ですから」

「Hum?」

「恐らく、水で柔らかくして傷に塗布するものでしょう」


塗布した後安静にしていれば、すぐに痛みも和らぎます、そう続けた小十郎の後ろで、彼女が笑ったような気がした。


「成程、な。腹の薬か。違いねェ」





by six.



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