今もキミの手元にあることを

Love Ya




あれから笹川と三浦は、莉奈のことには一度も触れてこなかった。もちろん俺もどうすればいいのか自分の中で答えが出ていない状態だから、何かを聞くことは出来なかった。

「獄寺くん…悪いんだけどお願いがあるんだ。」

そう言って10代目が申し訳なさそうに俺の所にいらっしゃったのは、あれから2日後の夜のことだった。

「何でしょうか?10代目、何なりとお申し付け下さい!」

「いや…そんな張り切ってもらうような事じゃないんだけど…明日さ、京子ちゃんとハルを空港まで送っていって欲しいんだ。」

本当は俺が行こうとおもったんだけど、重要な書類が溜まっちゃってて、リボーンに外出禁止令だされちゃったんだよねー俺ボスなのに情けない・・・

「10代目がお忙しいのでしたら喜んで!」


「本当?!よかった!」

ついでに10代目は情けなくなんてありませんから!と言う俺の言葉に、ありがとう。明日よろしくね、と答えられて10代目は俺の部屋を後にされた。

明日あの2人が帰るのか。この前の話をする最後のチャンスかもしれない。

そう思った俺は頭の中を整理することにした。

*******************

「じゃあねツナくん!」「お世話になりました!ツナさん!」

「また遊びにきてね!…獄寺くん2人をよろしくね。」

「お任せ下さい!」

別れの挨拶を済ませた2人を車に乗せ、俺はゆっくりと車を発進させた。

「ねぇ獄寺くん。」

すこしの沈黙のあと笹川が口をひらいたので、「なんだ?」とだけ相槌を返す。

「一つ聞いてもいいかな?…莉奈ちゃんのことどう思ってる?」

「…どうって…どういう意味だよ?」

「好きか嫌いかって意味です。」

莉奈ちゃんからの電話を無理矢理奪った後の獄寺さんは様子がいつもと違いました。だからハルは…

「獄寺さんは莉奈ちゃんのことが好きですよね?」

そう思ったんです。と、今度は三浦が俺に問い掛けてきた。

「もしそうだったとしたら…」

「「おねがい。莉奈ちゃんを助けて。」」

無言の俺に縋るような視線をバックミラー越しに投げ掛ける2人。

「助けるって、どういう意味だよ。…アイツが―莉奈が―そう望んでるのか?」

「それは…」

「もしも、」

"あいつが俺に助けを求めてきたら、その時はどうにかしてやろうと思う。"

別に見放しているワケじゃねぇ。本当は今すぐにでもどうにかしてやりたいと思うのが本音だ。

けどそれが余計なお世話だったら?

「そうだよね…」「ごめんなさい。」

「んな、謝ることじゃねぇよ。」

俺のほうこそ、謝らねぇといけない。
腐れ縁のこいつらがこんなに俺に真剣に頼みごとをしてきたのなんて初めてなのに、答えてやれないなんて。


「なぁ…莉奈に伝言たのみたいんだけどいいか?」

俺は賭けともいえる行動にでてみることにした。この状況を打開できるかもしれない唯一の方法。


********************


2人を乗せた飛行機が空に白い雲をのこし上昇してゆくのを車の中から見上げながら、タバコに火をつけゆっくりと吸い込む。

明日にはきっと彼女達の口から俺の伝言は莉奈へと伝わるだろう。

俺の言葉を聴いた後のことは莉奈自身が決めることだと思う。

「頼むから…」


(イタリアへと行く前に渡したあの紙切れ書かれた国番号からはじまる数字の羅列が、
彼女の手元に今もあることを祈る。)






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