はじめてあった日から変わらないもの。
お前と俺の年齢差。
『友達』という関係。


流れる月日が唯一変えてしまったのは、俺のキモチただそれだけなのに。

世界は色を変えた。

Love Ya



「ハルお姉ちゃんに対して、『アホ女』なんて言うなんて許しませんよ!」

中2の夏休みまであと少しというある日、そう言って俺をにらみつけてきたのが最初の出会いだった。

「アホにアホって言って何が悪りぃんだよ!!」

「ハルおねえちゃんはアホじゃないって言ってるじゃないですか!」

10代目に対して恋心を抱いている(らしい)、三浦ハル。そのハルを『お姉ちゃん』と呼ぶ一人の女。こいつもしかして、あのアホ女の妹か?どうりで…

「さすがアホ女の妹だな。アホな所がそっくりじゃねーか!」

フンっと鼻でその女を笑う。と、彼女はなおも食い下がり『私はアホかも知れないけど、ハルお姉ちゃんは違う!!謝れ!1』と俺に怒鳴る。


本当にしつこい女だ。ところで、問題のアホ女はどうして何にも会話に入ってこないんだ?と、思っていると

「この子はハルの妹じゃないです!!ハルのお隣のお家の子なんです。」

なんともまぁアホ女らしい見当違いの答えが返ってきた。別にその女がお前の妹だろうとそうじゃなかろうと、俺には全く関係がない。

そう言おうと口を開いた瞬間、

「なんで休みの日に家の前で言い争いしてるの?!獄寺くんとハルは…って、莉奈ちゃん?!」

驚いた表情の10代目が玄関にいらっしゃったのだった。…莉奈?…あぁこのアホ女パート2の名前か。って、10代目がどうして名前を知ってらっしゃるんだ?


「あっ!ツナくんだ。ねぇ、ツナくんもこの人にハルお姉ちゃんはアホじゃないって言ってよ!!」

この人凄く失礼なんだよーと、さっきまでの表情とは打って変わった明るい笑顔を浮かべ10代目に話しかける女。

「獄寺くんとハルはいつもの事だけど…今日は莉奈ちゃんまで…」

いつかは会うとは思ってたけど…と、ため息をついて10代目はアホ女パート2について話を始められた。


名前は、鈴木莉奈。年は1つ下の中1でアホ女と同じ緑中に通っている。そして、アホ女(ハル)の幼馴染。


「莉奈ちゃんは、ハルのことを本当のお姉ちゃんみたいに慕ってるんだよ。」

だから、ハルの悪口を言うとあんな風に怒るんだ。と、10代目は彼女を見ながら俺にそう説明してくださった。



************

…とても懐かしい夢だった。あれからもう10年という月日が流れたのに、まるで昨日のことのような鮮やかな夢だった。


「元気にしてるんだろうな。…まぁ、莉奈だしな。」

並盛を出る前に皆で撮った写真を眺めれば、その中には笑顔の莉奈。

最初は三浦のオマケくらいにしか思っていなかった彼女は、いつの間にか俺の心の片隅に住んでいた。

彼女のことを好きだと自覚したのはイタリアに発つ2ヶ月前。もちろん、この思いは俺の心の中に鍵をかけて厳重に閉まってある。本人どころかきっと誰も気がついていないだろう。

これからボンゴレ10代目の右腕として生きていく俺に、平凡な幸せなんて似つかわしくない。けれど、平凡な幸せこそ彼女にはとてもよく似合うと思う。無邪気に笑いながら、普通に恋をして結婚して、ガキを生んで…ありふれた幸せを味わって生涯を終えてくれたらと。

思いつく幸せの情景を彼女に自分が見せられるなんて思えなくて、莉奈の手をとることはできなかったのだ。

ただこの想いがいつか風化することだけを、切に願っていた。


想い出のひとつへと変えたくとも変わることのないこの恋の歯車が今更廻りはじめるなんて、その時の俺には予想すら出来なかった。






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