06





「おー、凄い!雪景色雪景色!喰らえKG!」

「イデッ!急に投げるなんて卑怯だろ!」

「んー?聞こえないなあ?」


そう言いながら、アルバはばかすかばかすか雪玉を投げてくる。ていうか、作るの早過ぎない?
春日山城の庭先、謙信とかすがちゃんは部屋の中からこっちを見て笑ってる。マサはその横で、ぐっすりお休み中。猫だけに丸くなって。


「ゆきがめずらしいのですか?」

「いや、珍しくはないスよー。けど、凍土は吹雪いてるしモンスターいるしでこんな穏やかなのは初めてで。くたばれKG!」

「だから俺にだけ酷くない?!」


KGだからな諦めろ!というアルバは凄くイイ笑顔。若干泣きそうな俺の事なんかお構い無しだ。
その応報は暫く続いて、アルバが飽きる頃には雪まみれ、ついでに溶けてびしょびしょ。
アルバはけたけたと笑いながら、庭先に置いた箱の上に座る。たしか、あいてむぼっくす、とか言ってた。


「さぁてと、謙信様ー。ちゃきちゃき狩りに行こうと思ってるんですけど、どこら辺にでたんスか?」


笑ってるけど、さっきまでとは明らかに違う。あれがきっと、"狩人"としての顔なんだろう。
謙信も少しばかり顔を引き締めて、地図を取り出した。アルバは箱から下りて、そっちに向かう。倣って、俺も。


「わたくしたちのいるしろは、ここです。みかけたのは、このあたりですね」


つう、と指が地図上を滑る。アルバはじっとそれを見据えてから、近いっすね、と小さく零した。
表情から笑顔は消えて、少し強張ったような、真面目な顔になってる。


「……かすがちゃん、此処って村?」

「ああ。まだ実害は出てないが、近くまで来ているという報告はある」


謙信の指したすぐ横をアルバが指す。かすがちゃんの簡潔な答えに、小さな舌打ちが聞こえた。その音に反応してか、マサがひょいと起き上がる。


「オケ把握した。謙信様、今から行ってきますけど……今回は少し帰りが遅くなるかもで。マサムネ、ウルク狩りに行くよ」

「ニャ!」


箱を開けて、武器やら何やらを取り出す。アルバが背負ってる武器は、赤を基調とした斧のような、何か。見たこと無い。


「なあアルバ、それって……」

「ああ、これ?フレイムテンペスト―――名前はどうでもいっかサーセン。スラッシュアックスって言ってね、斧と剣、どっちにも変形出来るシロモノだよ。俺の愛用武器」


中々クセになるんだよねえ、と、アルバはけたけたと笑う。正直、使いにくそうなんだけどな……。
マサはマサで、赤に黒っぽい刀身の剣を背負っていた。


「んじゃあ謙信様、いってきまー」

「な、なあアルバ!俺も行っちゃダメかい?」


慌ててそう言った俺を、アルバは怪訝な顔で見据える。……いや、これ怪訝じゃないかも。凄い顔してるよ。
怒ってる、というよりは不機嫌全開といった声色で、はあ?と零された。


「KG、アンタどういうつもりなの馬鹿なの死ぬの?危ないからって言ったよね俺危ないって言ったよね?大事なことだから二回以下略」

「アルバ、最後で台なしだぞ」


かすがちゃんのツッコミは見事に無視されてた。いや、顔が笑ってるから聞こえてはいるんだろうけど。
それでも、俺だって何かしたい。村の人とかに話を通すなら、乱世をよく知らないアルバよりも俺のが良いと思う。……アルバは許してくれそうにないけど。


「そこを何とか!村の人避難させたりとかしかしないからさ!勿論手はださないよ!」

「当たり前だろJK。はー……しょうがないなあ、死んでも俺知らないかんな?」


アルバは踵を返して歩き出す。
謙信に行ってくる!と声をかけて、その背中を追い掛けた。



120614
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