05




「うっわぁ……何これデカいんだけど金冠認定サイズじゃねティガさん。こりゃあよっぽど気ィ付けないと怪我じゃ済まないわフラグだよフラグ。さてと、全力でへし折りますか、ねッ!!」


放たれた矢は雷を帯びて、一直線に飛んでいく。当たったところで、ティガが倒れるようなことはない。
基本的にハンター、越えられない壁、モンスター、だもんなあ。最初っからクライマックスなんだけど。俺、参上!とか言ってらんねえよコレ。
走り回ったり緊急回避を使いながら、僅かな隙を見て矢を放つ。うーん……麻痺瓶使うか。いやでも、近接武器居ないし、動き止めたところでラッシュかけらんないしな、弓。まぁいっか、選択肢は増やしとけってことで。
突進を避けて背後に回る。それから、弓に麻痺瓶を付けて、ティガに矢を放った。









陣の外から聞こえる、地面を刔る音。それから、小さく霹靂く、雷。時折響く咆哮は、毎度毎度耳を塞がねえとやってられねえLevelに煩い。
そんな中で、オトモアイルーとやらのマサムネは、じっとそっちを見据えるだけだった。


「……そ、その、オトモ殿」

「マサで良いにゃ。どうかしたにゃ?」

「Hey,マサ。アルバ一人に任せて良いのか?」


吃る真田幸村に代わって問い掛ければ、マサは俺達に向き直った。
猫は猫だ、身体は俺達よりずっと小さい。それでも、見上げられる眼はしっかりと意志を持ち、鋭く光っている。


「寧ろ逆に聞くにゃ。お前達が行って何が出来るにゃ?何も出来ないで、旦那さんに迷惑かけるだけにゃ」


だから大人しくしてるにゃ、と正論をたたき付けられて、ぐっと押し黙る。だれもかれもが、そんな感じになってた。
仰いだ空で、ぱん、と何かが弾け、降っていく。それはMonsterに当たったんだろう、耳障りな鳴き声は、酷く苦しそうだった。


「なあ、マサ。アルバはさ、何時もあんなのを相手にしてるのかい?」

「そうにゃ。ハンターなんだから当たり前にゃ」


前田の言葉にも、当たり前のように返すマサ。
その瞬間、咆哮―――というには弱い、断末魔が響き渡った。陣の向こう側だというのに、砂埃が舞ったのが分かる。
それから直ぐに、アルバは陣の中に戻ってきた。多少汚れこそあるが、怪我は全く見当たらない。
俺達を見据えて、へらへらと笑う。


「討伐完了したよー。マサムネ、悪いんだけど剥ぎ取り頼める?」

「旦那さん、おかえりにゃ!じゃあボクは行ってくるにゃー!」


アルバと入れ代わりに、マサは陣の外へと駆けていった。走り方は、まんま猫だ。
あー疲れたー、等と言いながら、アルバは弓矢を下ろし、またItem boxの上に腰を落ち着ける。言葉にしてるほど、疲れてるようには見えねえ。


「うむ、アルバよ!見事な腕であった!」

「ありがとうございますお館様ー。でもまあ生業ですからね、出来なかったらハンターの名が廃りますよ」

「ふふ、けんそんはいりませんよ」

「本気ですよ謙信様!本気と書いてマジと読む」


そういって、アルバはけたけたと笑う。
ああ良かったらどんなのだったか見てみる?というアルバについていった陣の外。そこに居たのは、蜥蜴のようだが、前足には羽根がある、でけぇMonsterだった。
勿論、アルバが討伐したんだ、動く訳が無い。だが、絶対強者のような風貌に、畏怖や緊張は拭えねえ。


「これが、てぃがれっくす……なのか?」

「うんそーだよ。アレだね片小さん、ティガレックスが片言になってる。やっぱ言いづらいんだねえ」


小十郎が睨むも、アルバに気にしたようすは無い。やっぱり、へらへらと笑っているだけで。
軽い足取りでMonsterに近付くと、あのColorfulな鳥にしたのと同じ様に、腰のKnifeを突き立てた。


「んー……まぁそれなりか、物欲センサーマジ自重。ねえ幸ちゃん、猿助、ティガさん以外にこの辺でモンスター見た?」

「某は見ておりませぬが……」

「俺様も無いよ」


返された否定に、アルバはそっか、と笑った。Knifeを腰に戻して立ち上がると、マサを呼び戻す。
それから、小さい樽を片手に、はい離れて離れてー、と俺達を後ろに下がらせた。


「何をするんだ?」

「ん?こうするんだよ」


上杉の忍の質問に、答えになっていないような答えを返して、アルバは樽を置いた。すぐに本人も離れる。
数瞬おいて、その樽は爆発した。Monsterは一瞬で炎に包まれて、あっという間に見えなくなる。


「アルバ、どうしてこんなことするんだい?」

「上からの御達示でね。モンスターが居ない地域に、亡きがらだけ残すわけにはいかないらしいよ良く知らんけど。なのに小タル爆弾実費とかマジありえないし支給しろし」


最初の言葉こそ、質問をした前田に向いていたが、その後は完璧に"上"に対する不満だった。Hunterってのも、色々あるらしい。
炎は徐々に弱くなって、やがて鎮火した。残ったでけぇ骨は、アルバが力任せに叩き割る。……どんな力してんだよ、コイツ。


「さてと、んじゃあ謙信様のとこと伊達ちゃんのとこ、順番に回ってちゃきちゃき狩りますかねー」

「いいのですか?いらいをしたのは、かいのとらのしのびでは」

「ああいいんスよ。依頼内容は"全大型モンスターの狩猟"ですから。その分、ギルドから報酬ふんだくりますプギャー」

「相変わらず訳が分からねえ」


俺の言葉に、アルバはけたけた笑うだけ。うぜぇ。



120609
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