03





依頼主が見つかったところで、移動開始。なんでも、頼んだのは猿助だが、その上司にお目通りするらしい。あーあ、全力でめんどくせ。
猿助曰く"大将"が居るところに向かってるんだけど、周りの人間の視線が痛い。怖い。珍獣を見てるような感じなんだけど!


「……そ、その……アルバ殿」

「んー?何さ」


赤の兄ちゃんが若干どもりながら、俺の背後を指差した。
俺が背負ってるのはさっきまで使ってた武器じゃなくて、アイテムボックスそのもの。いやさ、特殊クエストで持ち込み可って言うから、簡易じゃなくて自宅のでかいヤツ担いできたんだよねー。きっとネコタク大変だったろうなあ、お疲れ様ですアイルーとガーグァ。


「お、重くないのでござるか?」

「重く……は無いかな。むしろ肩が痛くてパーンしそうですありがとうございます。やべぇそうしたら武器振れないじゃん俺の商売あがったりじゃん……!」

「Hey、訳分かんねえぞ」


青の兄ちゃんのツッコミはスルー。しょうがないだろあんまり人と接さないんだから。ぼっち楽しすぎるぜー!……サーセン自分で言っててイタかった。俺自重。
此処だよ、と言われた先は、布みたいなもので囲まれてる。えーと……何て言うんだっけこういうの。陣?だっけ。もう面倒だしベースキャンプでいいや、俺達からしたらそうだし。

そのベースキャンプの中には、大きい人と麗しい人がいた。え、何コレどうなってんのこの国。いろいろツッコミ所しか無いんだけど。ていうか、麗しい人の後ろにいる姉ちゃん、何だいその前開きレオタードみたいなのは。倫理的によろしくないと思うんだけど何なの俺だけなの?
そんなことをぐるぐる考えながら、アイテムボックスを下ろす。おぉう、肩ばっきばき。


「大将、例の狩人です」

「まいど、ハンターズギルドでっす。俺は狩人のアルバですどうぞよろしくー」


へら、と笑ってみせたら大きい人が豪快に笑った。え、何なんですか怖いんだけども。
俺の緊張が分かったのか、そう緊張せずともよい、と大きい人は言ってくれた。あ、そうなの?でもお偉いさんだよね?……えー、俺には高度過ぎます安西せ……サーセン黙ります。


「儂は甲斐の虎、武田信玄。おぬしが狩人か、世話になるのう」

「わたくし、うえすぎけんしんともうします」

「あー、いや、まあ仕事なんでお気になさらず。申し訳無いんですけど、どう呼んだらいいっスか?ってーか、何処から名前?まさか全部?」


この国の人の名前、やっぱり俺には高度すぎます。サーセン分かんねえ。
ぶんかがちがうのですね、と、えーと……うえすぎけんしん?さま?が穏やかに零した。違うってーか根本的に交わらないだけだと思うよ、うん。


「ふむ……では儂の事はお館様と呼べば良い!」

「わたしくは、なんでもかまいませんが……けんしんでけっこうですよ」

「お館様と謙信……様だな、うん。謙信様っスね、オケ把握しましたー」


人の名前と顔覚えんの苦手なんだよなあ、お館様と謙信様、お館様と謙信様。よし多分大丈夫。
なら俺様もちゃんと呼んでよ!って喚いてる猿助は無視無視。一回インプットされたモノの変更は断固拒否します。
そういや、青の兄ちゃん達の名前も聞いてない。


「兄ちゃん達の名前は?」

「Ahー…俺は伊達政宗」

「……片倉小十郎だ」

「某、真田幸村と申す!」

「俺は前田慶次ってんだ、よろしくな!」

「かすが、という」


わぁお、いっぺんに言われるとハンターさん混乱しちゃうヨー。しかもこっちの名前分からねぇってさっき言ったよな?俺言ったよな?無視するってことは文句言わせねーぞゴルァ。


「よし兄ちゃん達が喧嘩売ったのはよーっく分かった。金髪のおねーさんがかすがちゃんね。んで青いのが伊達ちゃん、頬傷のが片小さん、赤いのが幸ちゃん、居たことに今まで気付かなかった黄色のがKGな。オケ把握した」

「把握じゃねえよたたっ斬るぞテメェ!!」


なんでだよ間違ってないだろ。一発で覚えられたんだぜ俺凄くね?……サーセン黙ります。
伊達ちゃんブチギレて刀抜いてんだけど何ソレいいの?それなら俺、クエストリタイアしてとっとと帰るよ?温泉入りたいし。


「どう呼べばいいか分からないって言ったろー。それを無視したのはそっちじゃんバーカバーカ」

「な、なら今から変えてくだされ!」

「だが断る」


キッパリと言い放ったら片小さんが本気で切り掛かってきた。何コレなんの罰ゲーム?怖すぎるんだけど!
伊達ちゃんも切り掛かってきそうだし、幸ちゃんは猿助に泣きついてる。KGはなんか凹んでるんだけど。かすがちゃんは呆れ顔。
そんな光景を横目に、片小さんの突きを前転して避けた。
ところで、コレは誰も止めないフラグ?俺死亡フラグ?



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