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「よ、っと。ありがとな、帰りもヨロシク」

「にゃんのこれしき!クエストの成功を祈ってますにゃ」


ネコタクの運転手(……と、言っていいのか?)に礼を言うと、ニッコリと笑ってから俺に背を向けた。姿が無くなるまで、手を振って見送る。
それから、ぐるりと辺りを見回した。切り開いただけの簡単な道は、ただ真っ直ぐ続くだけ。
ずしりと重量感のあるアイテムボックスを背負い直して、宛てもなく歩きはじめた。
依頼主に会わなきゃいけないのは分かってるが……何処にいるのかも分からないし。
取り敢えず、何処にベースキャンプを置こうかな、っと。









「天・覇・絶槍!真田幸村、見!参!!」

「奥州筆頭、伊達政宗!推して参る!!」


恒例のような名乗りを聞き流して、六爪を振るう。真田幸村も、その二槍にFireを宿し、渾身の力で突き出して来る。
痛い金属音が響く。何時もなら耳障りでしかないそれも、戦場では高揚感を煽るものでしかない。
近付いて、離れて、互いの属性をぶつけ合う。コイツとやり合う以上の高揚はありえねえ!
一際大きい金属音のあと、かなりの距離を取った。
これが最後だ、と武器を構え直した、とき。


「政宗様、お逃げくだされ!」

「旦那!悪いことは言わない、此処から離れろ!」


切羽詰まった小十郎と猿飛の声が響いた。何時もなら邪魔をするなと一蹴するが―――今回はそう言えないくらい、必死さが伝わって来る。
流石に俺も真田も、怪訝な顔をして武器を下ろした。
どうかしたのか、と問おうとした時、耳に痛い咆哮が響き渡る。
その方向を見て―――唖然とした。


「何だ、ありゃあ……」

「あのような生き物が、日ノ本にいたのでござるか……?」


極彩色の、大きな鳥。普通の鳥より明らかにでかいうえ、嘴の中には本来在るはずの無い牙がびっしり生えていた。
踊るように飛び跳ねていたソレは、両翼をガツガツと鳴らしたあと、一気に距離を詰めてきた。


「――――ッ!?」

「なっ?!」

「政宗様!!」

「旦那ァッ!」


小十郎と猿飛の声が聞こえた。But、動くことは出来ない。有り得ない状況と、目の前のMonsterが、俺の足を地面に縫い付けていた。
ゆっくりと見える風景。ああコレが走馬灯か、なんて思考は嫌に冷静で。横にいる真田も同じように、鳥を見据えたままじっと固まっていた。


「伏せろ!!」


知らない声に突き動かされて、力が抜けるかのように膝を折る。
瞬間、俺達の頭上で閃光が起こった。伏せていても分かる位の強烈な。
光が消えて顔を上げたとき、あのMonsterの姿は、人の背中に拒まれて見えなかった。そいつは背に担いでた、見たことも無いような刃物を構え、Monsterに向かっていく。


「政宗様、ご無事ですか?!」

「No program.だが……何だ、アイツは?」

「見事な手腕でござる……」

「随分と軽装な気もするけどねー…」


見たこともねえ着物を纏い、傘を深く被った人間がその鳥と互角以上に戦っていた。
袴のようなモノをはいてるが、袴じゃねえ。上半身は身体にFitした袖の無いモノを着てる。
動きに派手さは全く無いが、Stepしたり前転したりしながら見事にMonsterの攻撃をかわしていた。それから、僅かな隙をついて、攻撃。

少しして、聞き慣れない断末魔とともに、そのMonsterは地に倒れた。嘴はひび割れて、無惨に曲がっている。
男は慣れた手つきで武器を背負うと、今度は腰に付けてたKnifeを、そのMonsterに突き立てた。


「ねえお兄さん、何してるの?」


背を向けたままの男に、猿飛が低く問う。そこで初めて、男は俺達の方を一瞥した。
傘の下、僅かに見える髪はGrayがかった黒。影になって表情は分からねえが、何処か"異質"だと、直感的に理解する。


「何、って……剥ぎ取りだけど」

「剥ぎ取り、だと?」


小十郎が聞き返すと、そーだよ、と小さく肯定して、男は顔をMonsterの方へと戻した。
肉を裂く粘着質な音、血が落ちる水音―――それに混ざって、死臭が漂う。酷く、気持ちが悪ぃ。


「な、何に使うのでござるか?」

「武器とか防具に加工すんの。コイツらに対抗するなら、それくらい常識だよ」


ハイ終わりー。と男は身軽に立ち上がって、漸く俺達の方へ、体ごと向き直った。
指で持ち上げられた傘の下、Gray混じりの黒髪と、戦慄するくらいの鮮やかなCrimsonの眼が、俺達を映す。


「良かったねえ無事で。んで、ちょーっと聞きたいんだけど、いい?」


さっきまでは打って変わって、にかりと男は笑った。酷く人懐っこくて、何故か無性に疲れた気がする。



120525
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