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鬱蒼とした森の中に、耳を塞ぎたくなるような断末魔が響いた。それはこだまして、全体へ広がっていく。驚いたように、鳥は一斉に飛び立った。 断末魔の主は、その巨体を反らせ、力無く倒れ込む。砂埃が舞い上がり、地響きと地震のような揺れが。 それを傍観していた男は武器を背負うと、小さな刃物を取り出し、鱗や爪を剥ぎ取る。
「……うし、これで終わりだな」
一通り剥ぐと、男はそれに背を向けた。被られた傘を少し持ち上げ、空を仰いだ。青色の中の黒い影が、雄大に飛び回っている。 それを見送ってから、男は一人、歩きだす。
*
「村長、戻りましたー」
「お帰りなさいませ、ハンター様」
渓流でのクエストを終えて、帰ってきたユクモ村。相変わらず村長は穏やかに笑って俺を出迎えた。 はー、流石に休みたい。大連続狩猟クエスト連チャンとか、本当勘弁してほしい。終わった後から言うことでも無いけど。 んじゃ、俺休みますんで。と背を向けたら、また呼ばれた。……もう緊急クエストは嫌だよ俺。
「ハンターズギルドの方が探していましたわ。申し訳ありませんが、集会浴場に行ってくださいませ」
「ギルドが?……イヤな予感しかしねえけど…了解っす」
自宅に向かおうとした足を右に向けて、階段を上っていく。途中すれ違った村民が、お帰りなさいハンターさん、と笑顔を向けてくれた。癒しだ。 何時もなら誰かしら知り合いハンターが居るんだが、今日に限って浴場には誰もいない。珍しいな、クエストか? 首を傾げながら、受付に足を向けた。
「どーも。村長に呼ばれてるって聞いて来たんスけど」
「お待ちしていました。……実は、難しい依頼がありまして。最近は村周辺も落ち着いておりますし、お願いできないかと……」
「……まあ、別にいいっすけど。どんなです?」
こちらです、と見せられた依頼。ざっと目を通しただけで、その異常はすぐに分かった。 クエストの種類は狩猟。契約金はまあ普通。報酬は出来高ってのは初めて見る。 でも、それよりも、何よりも。
「出現・狩猟モンスター不明、狩猟環境不安定……何すかコレ、目茶苦茶じゃないすか」
「こちらでも分からないのです……そんな状態でお願いするのも心苦しいのですが、」
なるほど、だから俺ってわけだ。単に厄介払いかもしれねえけど。……うわ、考えたくねえや。 短く了承を伝えて、契約金を支払う。それではハンター様お一人での出発になります、と定型文を聞き流して、自宅へ足を向けた。 担いでた武器をボックスに立て掛けて、装備を脱ぐ。楽な下着姿でベッドに寝転んでは、クエスト内容の書かれた紙を見据えた。
「全大型モンスターの狩猟、ね……」
何が出て来るか分からないのに、そう言われても正直困る。まあ何とかなるだろうけど。 小さく書かれた注意事項には、"アイテムボックスの持込可"、それから、"現地迄は自己責任"。 ……おいおい、勘弁してくれよ本当に。行って狩って帰ってくるまでがクエストだろ? どこぞのハイキングの決め事みたいな事を思いながら、むくりと起き上がった。現地までは自分で何とかしろって事だしな……あー、面倒。
さっき脱いだ装備――ユクモシリーズ一式――をさっと着ては外に出た。 ネコタク、お願いしねえとな。
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