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「どっせぇええええい!!」


間抜けにさえ聞こえる狩人の声、それとは裏腹に、振り下ろされた青い"何か"は、耳障りな音とともに、怪物の頭を容赦無く叩く。いや、そんな生易しいものじゃない。あれは、カチ割ろうとしている風に見える。


「どっこいしょぉおおおおお!!」


怪物の尻尾を避けて、また一振り。耳障りな鳴き声を響かせながらのけ反った怪物の眼は赤々と光り、尾を引いていた。
狩人はそれに怯まない。更に俊敏性が増した攻撃を避けつつ、また鈍器を振り上げる。


「だぁらっしゃぁあああああああい!!」

「貴様は煩いのだよ!」

「遥々来てるこっちの身にもなって!疲れてんの!俺疲れてんの遠征続きなの!分かる?!分かってお願いだから!」


だからといって、思いきり鈍器を振り回しつつ叫ぶ理由にはならんだろう。馬鹿かコイツは。
それでも、狩人の叫ぶ声は止まない。やがて、黒い怪物が事切れた事によって、狩人は鈍器を背に担いだ。


「いやあ、申し訳ないス豊臣様。つい本音がテヘペロ」

「あ、ああ……大丈夫さ。それにしてもお前さん、色々と破天荒じゃのう……」

「あー、よく言われます。サーセン慣れてください」


へらへらと笑う狩人に悪びれた様子はない。睨んでみれば、苦笑いをしながら肩を竦めてみせた。
背に担いでいた鈍器を立て掛けると、俺達に背を向ける。


「ちょっと待っててください、剥ぎ取り……あー、手伝ってー」

「にゃ!」


返事をしたのは、部屋の端にいた猫だった。たしか、狩人が肩に乗せて此処に来たはず。
ぴょこぴょこと跳ねるように走り、狩人の足元にたどり着くと、後ろ足だけで立ち上がった。ぎょっとする俺達に、ちゃんと説明しますよ、なんて緊張感の無い声で狩人が告げる。
腰の刃物を怪物に突き立て、刔るように鱗を剥がす。


「よっし、しゅーりょー。んで、えーと……何の説明すればいいんだっけか?」

「最初から全部なのだよ」

「うっわ、めんど……サーセンちゃんとします」


きつめに睨んでやれば、狩人は小さく頭を下げた。謝罪のつもりならもっときちんとやれ。
ええとですねえ、なんて、ぐだぐだとされた説明の理解は出来たが、にわかには信じがたい。それでも、見た以上信じるしかないのだが。


「……狩人」

「俺狩人だけど、名前は狩人じゃないしー」


にんまり顔で言われた言葉に、正直腹が立つ。が、言われていることは正論だった。
不機嫌顔を隠さずに、アルバ、と言い捨てれば、なにー?と間延びした声が返ってくる。


「貴様は何でも狩れるのか?」

「それがモンスターなら、まあ基本は。言っとくけど、俺人間は専門外だからね」


けたけたと笑いながらも、その眼は鋭い。威圧感、というよりは、威嚇されているような、そんな空気が肌を刺す。
少しの間のあと、それを吹き飛ばしたのは、秀吉様の軽快な笑い声だった。


「面白いのう、アルバ!来てくれたのがお前さんで良かったわ!」

「何処がツボなのかさっぱりですけど、ありがとうございます豊臣様ー」

「秀吉で良いぞ、アルバ!」

「マジすか。じゃあ秀吉さんで」


ニッ、と笑ったアルバは無邪気だった。さっきまでのあの雰囲気が、嘘みたいに。
すっかり意気投合している秀吉様とアルバを横目に溜息を。それは、横にいた左近と清正と重なった。



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