11






「てーかさぁ、また遠征ってどゆこと?俺ゆっくりしたいって言ったじゃん何で聞いてくれないかなあギルドの連中は。久しぶりに採取しに行きたかったんだけどなあ……そろそろキノコとかヤバいのに。物欲センサーマジ自重」

「旦那さん旦那さん、なんか論点変わってるにゃー」


マサムネの言葉には分かってるよー、と返しておく。ちょっとくらい理不尽なこと言わせてよ。俺の意志を無視してクエスト受注したギルドが一番理不尽だけどな!
足取りはとにかく重い。向いてる先には、何だかやたらでかい建物。ってーか、……屋敷?城?よくわからん。
門みたいなところに近付けば、そこにいた人にきょとんとされた。


「えーと……要請を受けてきました、狩人のアルバっス。あー……豊臣?様?に会いたいんだけども」


敬語とか全力ログアウト!だから俺チキンなんだって人間怖いよー。なんとか通じたらしく、その人は中に入ってったけど。
待ってる間、時間を持て余してると、マサムネがくいくいと裾を引っ張った。差し出された手には、ここにあるはずのない鱗。なるほど、オケ把握した。
鱗を受けとったとき、ご案内いたします、と声をかけられて、足を進める。マサムネは俺の肩の上ね。歩幅が違いすぎるんだもん。
案内された部屋には、なんか沢山人がいる。どうしよう怖いんだけど。俺チキンだからガクブルしちゃうんだけど。これだったら一人で同時狩猟行った方が良いんだけど!


「おお!お前さんが狩人か?華奢だのう、もちっと大柄な男が来るかと思っとったが」

「いや、俺普通なんスけど。えーと、ハンターズギルドです毎度あり。俺はアルバって言います狩人です」


ぺこ、と頭を下げたら、背負ってたアイテムボックスからドンガラガシャングシャア!って嫌な音がした。……中身ごちゃごちゃフラグですかコノヤロー。ビン類割れてないと良いなあ……。
すいませんちょっと、と若干キョドりながら外でボックスを下ろす。中を見たら、案の定ごっちゃり。いや、予想よりずっと良かったけど。ビン類割れてないし。
はー……と深く溜息を。俺片付け苦手なんだよね、マサムネに任せようかなー。
ボックスを端っこに寄せて、さっきまでいた部屋の前に戻ると、全員にぽかんとされてました、まる。え、何、なんなの?俺何かした?


「……ねえ、あの箱さ、中身なんなの?」


少しの間を置いて、帽子をかぶった兄ちゃんにそう問われた。どーでもいいけど、可愛い顔してんね兄ちゃん。若干引き攣ってるけどね。
履いてたモンを脱いで部屋に上がる。それから、座って傘を外した。


「武器とか防具とか素材とかその他諸々。さっきので中身ぐっちゃりだけども」

「重くない?」

「それなりにはね。でも慣れたー」


それもこれもギルドのせいだけどな!遠征ばっか受注しやがってふざけんな。畜生、帰ったら絶対休暇もらってやる。
俺の胸中を知るよしも無い帽子の兄ちゃんは、ふぅん、と小さく声を漏らすだけだった。だから何なんだこの兄ちゃん。
色々聞かなきゃなあ、と口を開こうとしたその瞬間、耳をつんざくような咆哮が、辺りに響き渡った。
舌打ちと共に、立ち上がる三人の兄ちゃん。もふもふ被った角の兄ちゃんはまあいい。銀髪も、まあ。でもさ……リーゼントってどゆこと?あれですか、ヤンキー的なアレですか。


「またあいつか……!」

「三成!悪態をつく暇があるならば向かうぞ!」

「っしゃあ!今度こそ俺がぶっ倒ーす!!」

「はーい兄ちゃん達取り敢えず落ち着こうか。んでもって邪魔」


がすっ、どすっ、ばきっ!と音が立つくらい、叩いて蹴って殴り倒した。え?最後がおかしい?いいじゃん腹いせだよ主にギルドへの。
三人の兄ちゃんは射殺さんばかりに俺を睨む。わあ怖い、俺やっぱり人間は専門外だヨー。他の人もぽかんというか、何とも言えない表情してる。


「なーんで豊臣様が俺のこと呼んだと思ってんの?専門家に任せておけばいーの。それとも何、兄ちゃん達自殺志願者?」

「貴様、どういう―――」

「あーもー、もふもふの兄ちゃん頭かったいなぁ!あとで絶対もふもふしてやる。ってな訳で、皆さん部屋から出ないでくださいねー巻き込んだらヤだし安全の保障出来ないスからねー」


訳が分からねえ、って聞こえた言葉は無視。ごめんねー、これ通常運転なのよ。
外に出て、ボックスを開ける。うーん、何にしよう。たまには笛かなあ。よし笛にしよう。かりかりぴーかりかりぴー。
ジンオウガの狩猟笛・王牙琴【鳴雷】を担いで、自分強化と攻撃力強化【大】の旋律を吹く。てーか鳴らす?笛なのか琴なのかどっちだよってツッコミは無しね。俺もよくわかんないし。


「アンタ、やる気あるんですかい?」

「勿の論。ちょっとでも有利にしたいんだよねー」


てーか文句ばっか言ってんじゃねーよホームランすっぞコラ。吹っ飛ばすぞ空の彼方まで。
武器を一度背負って、角笛を鳴らした。特徴的な音は辺りに響き渡って、俺の居場所を主張する。
すぐに現れたのは、闇に溶け込む黒い体躯に、長い尻尾を持つモンスター。


「やっぱナルガか。鱗落ちてて助かったー。さぁて、ひと狩りいきますか!」


威嚇するナルガの頭目掛けて狩猟笛を振り下ろす。ギュイーン!って鳴るのは仕様なんだからしょうがないだろ、そんな目で見んなよ兄ちゃん達!俺イタい子じゃな……くないですねサーセンっした。



120811
back



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -