09





「おはようございます、政宗様」

「Good morning」


何の変哲も無い朝、何時ものように朝餉を食べて、さて鍛練でもするか、と歩いてるときに、やたら城門が騒がしいことに気が付いた。
いくら喧嘩っ早いアイツらでも、ここまで騒ぎ立てるのは珍しい。何か来やがったのか?
小十郎と顔を見合わせてから、城門へと向かう。


「Hey,何かあったのか?」

「あ、筆頭!それが、おかしな奴が訳のわかんねえ事を―――」

「だーかーらー!伊達ちゃんか片小さん呼べっつってんだろ!普通呼んでくるだろJK!」

「テメェ、筆頭と小十郎様を変な呼び方すんじゃねえ!」


言葉を遮るように聞こえてきた声は、どう考えても聞き覚えがある。というか、あんなCrazyなNicknameで呼ぶのは一人しかいねえ。思わずついた溜息は、小十郎のそれと重なった。
正直関わりたくねえが、仕方ねえ。兵を掻き分けて前に出れば、アルバは目敏く俺を見つけて、ヘラヘラと笑った。


「伊達ちゃんやっほー。謙信様んトコ終わったから来てやったよ感謝してね!」

「マジでうぜえ」

「わーい褒め言葉をどうもー」


何を言ってもヘラヘラ笑うだけ、蛙の面に水だ。それでも何処か許せてしまうのは、こいつの人柄なのか。
相変わらず、でけぇItem boxを運んできたんだろう、それはアルバの横に置かれている。
だが、アルバは不意にそれを開けると、中から一対のSwordを取り出した。一気に臨戦体制になった俺達など、眼中にない。


「はい、ちょっとどいて!邪魔!」


唖然とする兵を掻き分け、アルバは走る。その先にはあの青い奴らが、わらわらと。
威嚇するMonsterにお構いなし、アルバはSwordで切り付ける。くるくるとTurnするような戦い方は、何処かDanceを彷彿される。


「あーもー面倒だなドス系は!"鬼人化"!」


シャキーン!と音が鳴ったのは空耳って事にしておく。
Swordを頭上でCrossさせると、アルバは赤いAuraのような何かを纏い、一気にRushをかけた。
反撃の隙すら与えねえ猛攻に、Monsterは息絶えた。一際大きいのが倒れたせいか、周りを取り巻いてた小さい奴らが逃げようと試みる。
が、アルバがそれを許すはずがねえ。素早く近付くと、文字通りあっという間に討伐した。


「やっぱドスバギィかー。伊達ちゃん達、怪我は無い?うん無いね!」

「分かってんなら聞くな」

「一応聞いとかないと、後で俺の責任とか言われたくないからねー。てーか伊達ちゃんは殺しても死ななそうだし!」


アルバは剥ぎ取りをしながら、けたけたと笑う。褒められてんだか、けなされてんだか、判断に困るが、どうせコイツのことだ。どっちでもなく、ただからかってるんだろう。
ぽかんとしてる兵達には悪いが、取り敢えずアルバを招き入れた。


「へー、なんかオシャレだねえ。謙信様んところは質素だけど美しいって感じだったもんなあ」

「Ha!独眼竜は伊達じゃねえぜ?」

「そかそか。自己否定乙!」


グッと立てられた親指は、思いっ切り叩いておいた。本当なら、そのにんまり顔を殴りてぇ。
痛いなあ、と言いつつもそうは見えない。俺の斜め後ろで、小十郎が大きく溜息をついてた。


「……それで、テメェはこれからどうするんだ?ここらで見かけたもんすたーは、さっきのだけだぞ」


小十郎の言葉に、へらへらしてたアルバの表情が、いっきに鋭くなった。さっきまでとは、まるで別人だ。
ああうん、そうなんだけどねえ、と、変わらねえ調子で話してるくせに、浮かべる笑顔は何処か冷たい。


「ドスバギィみたいな連中はね、基本的にこんな所には来ないんだよ。本来は凍土に生息してるくらいだから」

「……What? 何が言いてぇんだテメェは」

「分かってんじゃないの、伊達ちゃん。人と違って、力関係とか捕食関係とか、ヒエラルキーはハッキリしてるんだよ?」


Hierarchy―――自然では覆す事が難しい、或いは、覆らない絶対的な力関係。
曖昧にしか理解出来てなかった、漠然としたそれを突き付けられて、ぞくりと背筋が冷えた。じゃあ、なんだってんだ、アルバの言いたい事は、まさか。
アルバはゆっくり立ち上がると、Item Boxの中から武器を取り出した。見たことの無い形をしてるそれは、白とOrangeで彩られている。


「ねえ伊達ちゃん、片小さん。悪いことは言わないから、大人しくしててね?外で聞き耳たててる人達も。マサムネ、彼らの傍にいてやってよ。ちょっと"遊んで"くるから」

「にゃ!」

「……さぁて、ひと狩りいきますか」


すぱん!と開けられた障子の奥には、何時もの四人が重なり合って俺を見据えていた。アルバに押されて、部屋に転がって来たが。
アルバが仁王立ちするなか、段々と近づいて来る足音が、酷く、重い。そして、現れたのは、青い体躯に鋭い爪を持った、身体にThunderを纏う、―――Monster。
その姿を見てもアルバは臆することなく、武器を構えた。でけぇ斧のような、その武器を。


「愛してるよジンオウガ俺の嫁ぇえええええええええええええ!!」

「テメェ今までのSerious返せ!なんかもう色々返せ!!」


ひゃっほう!と、戯れるようなTensionのアルバを見て一気に脱力。何なんだ本当に。
頭を抱える俺の肩を、マサがポンと叩いた。首を横に振られる。
……言っても無駄なことだけは、よく分かった。



120718
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