07
KGに案内されながら着いた先には、予想通りの影があった。 うんまあノーマルサイズってところかな。まあウルクだし、でかかろうが小さかろうがあんまり気にしないけど。最小金冠とかあの小さい身体で何で?!ってくらい火力あるけどね流石モンスター。
「アルバ、あれかい?」
「そ。白兎獣ウルクスス―――兎っつっても動きは殆ど熊だけどな。さてと、ひと狩りいきますか!」
ウルクの背後からペイントボールを投げる。お、命中した。良かったー俺ノーコンだから外すんだよね。へたれ?知ってるよ畜生! 後ろ足で立ち上がって威嚇するウルクに思いっ切り一発。KGがえげつな……とか言ってたのは無視する。しょうがないだろ油断すれば一発でサヨナラ現世なんだから。いくらモンスターの素材使った武器だっつっても扱ってんのは非力な人間。結局、力のヒエラルキーはそう簡単に覆らない。 マサムネも武器を振り上げてウルクに向かっていく。勇敢なのは構わないけど、力尽きんなよー。
「……あ、KGー。そっち危ないー」
「え?うわぁああぁああぁぁぁああぁ?!」
ウルクの滑走に情けない声を上げ、慌てて逃げるKG。うっわぁざまあねぇやプギャ……サーセン自重します俺自重。今度は俺の方に来るもんだから、武器を構えたまま横にステップ。斜め後ろで止まったから、振り向いて背中に一発。
「アルバ!もっと早く言ってくれよ!」
「え、だってKGだったらすげぇジャンプ力でエスケープ出来そうじゃん。ハンサムとは言われて無いけどハンサムエスケープ的な」
「よく分からないけど無理だから!」
ちぇ、何だよつまんねぇなあ。 そんなやり取りをしつつも、ウルクの攻撃はバッチリ避けてます。流石にね、一応名のあるハンターですから。 マサムネが投げた爆弾でウルクは怯む。その間に、斧モードから剣モードに変形させて、思いっ切り振り下ろした。お、耳破壊完了ー。
「ウルクはお腹をソリ代わりにして滑走すんの、まあ直線的だから頑張って避けてねKG。氷投げてきたりとかもするか……あ」
言い終わる前に、KGはウルクの投げた氷塊がクリーンヒット。あちゃー、遅かったか。てか避けろし。 足元を攻撃して転ばせた後、KGの方に走る。仰向けになったまま動かないんだけどコレどういうことなの?
「KGー大丈夫かー生きてるー?……返事が無い、ただの屍のよ」
「勝手に殺さないでくれよ!しかも前半棒読みなのに後半は感情篭りすぎじゃない?!」
人の言葉遮ってんじゃねーよゴルァ。ウルクの前に突き出してやろうかコノヤロー。 文句はスルーして、怒り状態になったウルクにまた一発。ごろん、と転がった所を逃さずに、切り上げ・切り下げでラッシュをかける。 渾身の力で振り下ろせば、ウルクは痙攣して、それから動きを止めた。
「はい、討伐完了ー。まぁた剥ぎ取ってからの爆発かあ……地味に小タル爆弾の出費がきつい」
「俺の心配くらいしてくれても……」
「死んでないなら大丈夫だ、問題無い。甘ったれた事言ってんじゃないよKG」
話しつつも剥ぎ取りの手は止めない。小タル爆弾置いてから、小走りでそこを離れる。俺を見てか、KGも慌てて離れた。 赤々と燃える炎。じっとそれを見据えていれば、KGが俺の横に並ぶ。
「お疲れさん、アルバ」
「……ねえKG、この辺りに洞窟とかってあったりする?」
「え?洞窟なら、此処から真っ直ぐ行ったところにあるけど」
KGの言葉を聞いて、すぐに走り出した。戸惑うKGの声に消されそうになりながら、マサムネが俺を追う足音が聞こえる。悪いんだけど、気にしてらんないんだ。てか帰れ。
「旦那さん!ウルクだけじゃないにゃ?」
「うん、乱入―――というよりは、連続か同時狩猟っていったほうがいいんかな。いくらウルクが狩りやすいとはいえ、あれは弱すぎる。……となれば」
言葉を遮るように、洞窟内で咆哮が反響した。思わず耳を押さえて、周りを見渡す。 漸く暗さにも目が慣れて、姿をとらえたとき、背後からKGの声がした。ああ畜生、タイミング悪すぎだろ! 走って来るKGを蹴りで転ばせ、俺はしゃがむ。頭上を通り過ぎたのは、猛毒の塊。
「アルバ、どういうことなんだコレ?!」
「うっせ、黙れKG。ウルクだけじゃなかったってだけの話だ。畜生、解毒薬忘れたナンテコッタ」
俺はともかく、KGが毒にやられれば無事で済まない可能性が高い。マサムネに言って帰らせよう、コレばっかりは無理だ俺が死にかねない。 ペイントボールを投げれば、それは白い体躯に鮮やかなピンク色を付けた。 伸縮性のある身体を持つ、その理不尽なモンスターは―――毒怪竜・ギギネブラ。 ……どうみても卑猥な想像しか出来ない俺の頭も理不尽だけどな!
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