狩人は神を喰らうのか


※モンハン混合アナザー・inGE2(=アルバ)
※モンハン主はGEBの時間軸に一度極東支部に来てる
※GE2の若干ネタバレ注意
※カオス
※自己責任






「あ、コウター!!よかったよ知り合いに会えたー!!もー、暫くぶりだとこんなに変わるものなんだねえ」

「え、わ?!うっそぉ、アルバ?!アルバじゃん!!」


任務が終わって帰投準備をしていると、後ろから声がかかった。コウタ隊長が振り向いた先には、大きな何かを背負った男が。ぶんぶんと手を振り、こちらに向かって走ってくる。訳の分からない俺達に、コウタ隊長は大丈夫だよ知り合いだから、と笑って見せた。


「また博士に呼ばれたの?」

「んー、まあそんなところ!本当に久しぶりだなあ、元気そうで何よりー。ところで、後ろのおにーさん達はお仲間さん?」


男はニコニコと笑いながら俺達を見据えた。からす色の髪に、血を彷彿させる赤い眼。それはどこか人間離れしているように見えて、背中がぞくりとした。固まる俺達に、男はゆっくりと近づいてくる。


「ハジメマシテ、ハンターのアルバっていーます。おにーさん、お名前は?」

「……失礼した。俺はジュリウス・ヴィスコンティ。こちらは部下のシエル、ギルバート。貴方は、フェンリルとどういう関係が?」

「んー……依頼者ってとこかなあ。別に俺、えーっと……ゴッドイーターだっけ、それじゃあないし。ただのハンター、狩人さ」


ゴッドイーターじゃない?見たところ技術者にも見えない。狩人というが、狩るべき動物など、一匹たりともいない。いるのは、人類の敵であるアラガミだけだというのに。
思案する俺をよそに、アルバはシエルとギルに頭を下げていた。へらへらと笑う様子は楽観的にも見えるが、その紅の眼は、どこまでも深く、真意が分からない。


「なあ、アルバもアナグラに行くんだろ?」

「勿論。……なんだけど、ちょーっとお仕事、かな?」


コウタ隊長の言葉を受け、にやりと笑うアルバ。その眼はどこまでもまっすぐで、それなのにどこか、アラガミのそれを彷佛させた。背に担いでいた何かを構えると、俺達に向きなおる。


「ちょっとドンパチするから、大人しくしててね?俺、基本的にソロだからさー。人を巻き込まないように、とか考えて狩りしてないのよー」


ていうか、そんな余裕も無いしね、と、アルバは続けた。笑んだままの表情は、崩れない。それが酷く、滑稽で哀れに見えた。それと同時に、言い表せないような畏怖が、俺の感情を蝕んでいた。
その瞬間―――耳を劈くような、聞いたことの無い咆哮が響き渡った。アラガミのそれとは違う、感情と温かみの感じられる、酷く特徴的な咆哮は、反響して四散する。
ずうん、と地面を震わせて俺達の前に現れたのは、黒い体躯に紫が映える、大きな何かだった。アラガミではない。だが、こんな生物は、アーカイブに居なかった。じゃあ、これは、いったい。


「あ、アルバ!!こいつ、前のと全然違うじゃん!!」

「えー?そりゃあそうだよ、マガラさんは最近確認されたモンスターなんだしさあ。そうそう、不用意に近づいちゃあ駄目だかんね。……さあて、ひと狩り行きますかァッ!」


コウタ隊長の言葉に軽く笑って、アルバはその"モンスター"に向かって走り出した。止めようとのばした手は、無意味に空を切る。
アルバはと言えば、モンスターの攻撃を軽々と避けながら、隙を見つけては武器を叩き込んでいた。その度に、鈍い音が響き渡る。


「コウタ隊長、助太刀は……」

「アルバの言った通り、入る必要なんかないよ。てーか……入れないだろ、あれ。俺には無理」


俺の言葉に、コウタ隊長は苦笑いを浮かべた。その視線の先では、アルバが《マガラさん》と呼んでいたモンスターに、攻撃を繰り返している。そしてそれは、不意に途切れた。見れば、モンスターはホールドトラップにでもかかったかのように動きを止めていた。


「うっし、かかったァ!!おやすみなっそーい!!」


バキィッ!!と、何かを力任せに壊す音が響いた。モンスターは弱く鳴くと、地面を揺らしながらその体躯を横たわらせる。そして、微塵も動かなくなった。
少しの間、アルバはそれを眺めていたが、動かないことを確認したのか、俺達の方を向いて、へらり、と、また笑った。


「おっまたせー。みんな身体変だったりしないね?怪我ないね?」

「問題ありませんが……あの、アルバさん、でしたね。貴方こそ、大丈夫ですか?身体に、その……オーラのような何かが、纏わり付いているように見えるのですが……」

「え?ああ、これ?ダイジョーブダイジョーブ、その内完治するから」


近づいてもうつらないから大丈夫よー、と笑うアルバは、紫色のオーラのような何かを纏っていた。それが当たり前なのか、アルバはへらへらと笑うだけ。
俺達は内心、気が気でない。その内完治する?なら、それは病気だとでも言うのだろうか。そうだとしたら、何時罹患した?思案する俺に気づいたのか、アルバは言葉を続ける。


「ただの"狂撃化状態"だから気にしないでって。あー、そうは言っても分からないか。えーと、えーと……狂竜ウイルスに罹患して、それを克服した証だから問題ないんだよ」

「狂竜ウイルス?全然大丈夫そうには聞こえねえな」

「そりゃ、オニーサン達が罹患したら危ないかもねえ。俺達ハンターは慣れてるから平気なんだよ、柔な身体してないし」


ギルの言葉にも、ケラケラと笑うだけ。そうこうしている内に、アルバが纏っていたオーラのような何かは、跡形もなく消えうせた。アルバはそれを確認すると、ほらね、と首を傾げた。大の男がやっても、全く可愛くなんかないぞ。
アルバは残しておいたら困るんだっけ、と独り言のように零すと、モンスターの亡骸に近づき、身の丈ほどもある樽を二つ、その横に置いた。……どう持ってたんだ、あんな大きい物を。そそくさとそこから離れると、落ちていた小さい瓦礫を持ち、その樽に向かって放り投げる。それが当たった瞬間、大きな音を立てて爆発した。もうもうと上がる煙のにおいと、肌を焼くような熱さが酷く不愉快で。


「……何やってんだ、アンタ」

「えーと、ギルバートさん?ギルベルトさん?面倒だからもうギルさんでいい?何、って、死体処理だけど。残しておいたら困るんでしょー。前ん時、コウタとソーマに煩く言われたもんでねえ。アラガミが捕食したら困るんだってね、俺にはよくわからんけど」


相変わらずへらへらと笑うだけのアルバに、心底溜め息をつきたくなった。
…………この男は、どうも苦手だ。



狩人は神を喰らうのか
(生きるためには、殺すしか無い)




2013/12/29 11:55




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