オーシャン・ブルーは濁らない


※むそバサアナザー
※ジョジョの奇妙な冒険・現パロ混部
※夢主=無双2元親成り代わり女主=元稀(あさき)
※ジョースター家家族・マフィア(?)パロ
※カオス










「―――やあ、いらっしゃい。元稀」


自然な動作で扉を開け、俺に微笑む表情はとても優しい。
彼のそれは本物の優しさだ。だからこそ強い。だからこそ、彼は何よりも、誰よりも残酷だ。
ひやりとした廊下を歩き、たどり着いたのは居間だった。複数の眼が、俺を見据える。
怖いとは思わない。だが、流石に気分の良いものではなかった。


「適当に座ってよ。何か飲むかい?」

「気遣いだけ頂戴する。……用件を問おうか、"ジョジョ"」


それが引き金になると知って、あえて言葉を紡ぐ。空間の雰囲気が一気に変化した。
気にする必要は無い。この一家では別に珍しくないし、何より、こういう雰囲気には慣れている。
沈黙が空間を支配したあと、"ジョジョ"―――ジョナサンはその重い口を開いた。


「例の事件の情報が欲しい。あれは、"異常"だ。スタンド使いとみて問題ないだろう」

「そうか。……それで?俺を動かすのには足りないとわかっているだろう?」

「テメェッ……!!」

「仗助、止しておけ」


髪型を貶したわけでもないのに声を荒げた仗助を、承太郎が静かに止める。声には出していないが、ジョセフも徐倫も、ジョルノも、敵意と憎しみを込めたような眼で俺を見据えていた。ああ、なんと滑稽な。
自然と口角が上がる。別に貶すつもりは無い。ただ、この一家は、本当に向いていないのだ。なぜ裏に足を踏み入れてしまったのだろう。最初からとっぷりと浸かっていた俺とは違うというのに。


「それで?"対価"は何が良いのよ?」

「そう怖い顔をしないでくれ、徐倫。折角の可愛い顔が勿体無いだろう?……さて、どうしようか。"お得意様"に、そう支払ってもらうつもりは無いんだがな」


みるみる内に顔を赤らめる徐倫に、小さく笑う。あまりからかうと、承太郎と徐倫にオラオララッシュを喰らいかねない。流石にそれはいただけない。勿論、仗助のドララララッシュもジョルノの無駄無駄ラッシュも願い下げだ。……というか、なんなんだろうなこの一家は。人の事など、言えた義理ではないが。


「……なら、仗助。クレイジー・ダイヤモンドで俺の傷を治せ。それでいい」

「そんなんでいいんスか?てーか、傷なんか何処に―――」


仗助が言い終わるより先、着ていたものを脱いだ。空気が凍る。それは決して殺気の類ではない、……言うなら、驚愕だろう。
コレばかりはいつまでも慣れなかった。あの時代から遠く離れた世界。同じ世界かも疑わしい、不可思議な世界。何もかもが変わった世界でさえ、俺はただ一人置いていかれていた。
身体中に残る傷痕。痕であるはずのそれは、思い出したかのように一斉に口を広げ、ごぽり、と溢れるように血が流れはじめていた。

ああ、どうしてだろうか。この傷が、何よりも愛おしいなんて。









「ああ、すまないな仗助。……コレで自由に動ける」


そう言って笑った元稀さんは、とても穏やかで。まるで、家族を前にしているかのようで。
俺のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドで人の傷を治すのなんか、別になんてことはない。今まで何度もしてきたし、これからもきっとそうだろう。
それでも、馬鹿な俺でも分かった。元稀さんのこの怪我は、異常だ。治しても、傷跡が消えない。それどころか、まるで自然に治ったときのように、皮膚が引き攣っていた。痕として凹んでいたり、出っ張ったりしていた。
どうして。俺のクレイジー・ダイヤモンドは、傷を癒せる能力なのに。


「どうして、と問いたそうだな、仗助。大方、俺の傷が異常だと感じているのだろう」


―――読まれてる。
俺だけじゃなくて、承太郎さんやジョルノなんかも目を見開いていた。元稀さんは、小さく小さく笑うだけ。
緩慢な動作で服を着ると、じっ、と俺達を見据えた。


「これはこれでいいんだ。生きている事は罪であり罰。俺の罪は贖えない。俺の罰は終わらない。この傷だけが、俺に残された唯一の証拠。唯一の証明。唯一の現実だ」

「ちょ、ちょっと待てって元稀。お前、言ってることがよく―――」

「ジョセフ」


凛とした声に、全員が息を飲んだ。
ただただ響くだけの声。そこには感情も、意思も、温度さえ感じられなかった。ただの、"声"。意味を持った音といってもいいだろう。
そして、その眼も何も映してはいなかった。冷静というよりは冷めた、落ち着いているというよりは気怠げな、何処も映さない眼。


「分からないでいてくれ。そうでなければ、"俺"が、壊れてしまう」


上げられた口角は、何の意味も持っていない。
動けない、声すらも出せない俺達を横目に、元稀さんはドアのほうへと向かう。その行動が、あまりにも普通過ぎて、逆に吐き気がした。
ああ、気持ちが、悪ィ。


「情報は明日持ってこよう。……ではまた、どうぞご贔屓に。"ジョジョ"」


ぱたん、と音を立てて、ドアが閉まった。
それを確認するまで、俺たちは誰も動けなかった。





オーシャン・ブルーは濁らない
(ただ、凛と澄んだ色をして)
(何もかもを魅了する)

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何が書きたかったんだろう、自分は……←
ジョジョに元稀を突っ込みたかったんです。それだけです。
元稀は情報屋的な何かと考えてください。

周りには誰もいません。ジョースター家もブランドー家も、ツェペリ家も元稀のお得意様で仲がいいけど、"彼ら"のいない世界は、元稀にとってどうでもいい。
ただ、死ねないから生きているだけ。結局は、自分を守るため。


2013/03/22 14:19




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