例えばそれを知らなくても、私は出会ってしまっただろう。 | ナノ


  えがきだす


これは何かの罰だろうか、とさっきから自問している。

「うん、こんな天気じゃ飛べないね」
「うう…だよね…」

タワーオブヘブンから帰ってきて、さあて美味しいケーキを買っておいたの、わあ嬉しい、なんて話しているうち、急に天気が悪くなって、あっという間に雷まで鳴り出してしまった。何か、ポケモンの仕業とでも言えそうな天候の変化にため息をついた。

「あっ、ほらさっきのトウヤくんが挑戦しに来てるかもだよ」

少しでも気分を盛り上げようと話題を提示する。フウロちゃんはジムリーダーだから、挑戦者がいたらそっちを優先しないといけない。それはアーティも同じことで、ジムリーダーは大変だなあ、なんて思う。

「うーん、まだタワーオブヘブンから帰って来てないかな…、こんな天気だし、ポケモンも疲れちゃうよね」
「そうだよね、あ、ジュペッタ…」

ぱっと思い出して、ボールをバッグから出す。食い気味ボールが軽快な音を立てて開いて、ジュペッタが飛び出してくる。見た目はいつも通りの笑顔だけど、確実に怒っている、と思う。

「わあ、ごめんね、ごめんってば」

ぺてぺてと袖のような腕で叩いてくるジュペッタに謝る。フウロちゃんの飛行機に乗る時に、危ないからと半強制的にボールに入ってもらっていたのに、今の今まで忘れていた。

タワーオブヘブンには野生のゴーストタイプのポケモンがいるから、もしかしたら会ったり、見たかったのかもしれない。ヒウンシティのあたりには、ゴーストタイプのポケモンなんてそうそう居ないから。

「ジュペッタちゃんは寂しかったのかなー?」

にこにことした顔のフウロちゃんがジュペッタを持ち上げてそう言う。ジュペッタはキシキシシと笑ってはぶんぶんと頭の飾りを揺らしながら頷いている。あの子はいつもボールに入りたがらないから、本当に寂しがりやなのかもしれない。

「今日はこっちでお泊まりだよー」
「えっ、フウロちゃん私明日はお仕事が…っ」
「こんな天気じゃ帰れないよ!館長さんは優しい人だし、アトリエヒウンは時々気分で休館日にしちゃってるでしょ?だから、大丈夫だよ!」
「ええ、でもお仕事はお仕事で…」
「アーティストは気分も才能!ってアーティさんが言ってたよ。ほら、ネムも才能を大事にしよ?」

アーティはまた適当なのか深い事なのか、よくわからない迷言を広めているみたいだ。それが面白いのか、ジュペッタはまだ笑っている。

「じゃあ、アタシジムに行くね!夜にケーキ持って宿泊棟に行くから、別腹は開けておいてね。それと、明日の天気次第で飛行の時間は決めるからねー」

ジュペッタを私に抱かせつつ、フウロちゃんはそう言ってポケモンセンターを出て行った。フキヨセジムは今日もぶっとぶのか、考えると少し楽しくなってきた。ポケモンセンターから見える景色を、少しスケッチしよう。

本当はタワーオブヘブンから見える景色をスケッチしたかったのだけど、怪我をしていたポケモンを元気にしたあと、トウヤくんが来て、少し話したらそのままフウロちゃんのポケモンに空を飛んでもらって、ここまで帰って来てしまったから。

雨のフキヨセシティをガラス越しで描くなんて、なんだかそんなに特別なことじゃないのに、心が躍ってくる。


121109

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