頭が鈍器で殴られたような気がした。シリウスは真剣な眼をしている。レギュラスと同じ灰色の双眸が私の眼を捕えて離さない。ちがう、レギュラスは、

「メル、なあ、認めてやってくれよ」

「やだよ」

やだ、やだ、駄々をこねる幼児のように、私の口からは否定の言葉が垂れ流しになる。違う、否定してなんかない。そんなわけない。私とレギュラスは、今喧嘩しているだけなの。またいつか分かり合えるの。だから、そんなこと、認めない。あれが最後の言葉だなんて、私は、認めない。認めたくないよ。

「お前が認めないと、あいつも浮かばれないだろ」

ちがうちがうちがうちがう。レギュラスは、そんな、ちがう。そんな言い方ないよ。どこかで聞いてたらどうするの、レギュラスはいじけると面倒なんだよ。ねえ、ちがう、違う、レギュラスは、今日はまた高校に残って勉強をしてるだけなの、私には解けないような勉強、だってレギュラスは頭がいいんだもの、私、知ってるよ。レギュラスは大きくなったらお医者さんになるって。だって、自分みたいに苦しんでる人を――、あ。



「…レギュラス、は」

「…死んだ。お前も、聞いたし、見たし、花も、入れて、拾って、」


「…綺麗な顔、してた。高校に入って以来、会うたびに深くなってた眉間のしわもなくなって、やわらかい笑顔、で」

今は箱に入って、だから。

「私、会いに行く、会い行きたい。私、まだ、ちゃんとした気持ちで会ってないから、だから」

「ああ」

会いに行くの。



110906