ぼんやりと暖炉の火を眺める。クリスマス休暇の終わったホグワーツはまた生徒の声でいっぱいになっていて、スリザリンの談話室も例外じゃない。ドラコはグレゴリーくんとヴィンセントくんに自慢話。それを聞き流しながら、膝の上に乗った毛玉を撫でた。…毛玉太った?

毛玉の脇下に手を入れて持ち上げると、不機嫌そうにうなぁ、と鳴く。毛玉は勝手にうろちょろする癖に何故こんなにも太っているんだろう。まだ2歳かそこらの毛玉に食事の制限なんてしたくはない。ハグリッドに話を聞きに行こうかな。毛玉は魔法動物じゃないけれど、動物に詳しいハグリッドなら参考になることを教えてくれるだろう。

「ドラコ、私少し出てくるね」
「姉上、ここからが面白いのに」
「ああでも、私が聞くよりほら、パンジーちゃんが聞きたいみたいだし」

そういうとドラコがぎょっとした。すこし離れたソファーにいたパンジーちゃんがぱぁっと笑顔になってドラコに駆け寄ってくる。恋する女の子は可愛い。

「それじゃ、行ってくるね」
「姉上、でもそろそろ消灯時間…っ」
「アー…、すぐ帰ってくるよ。減点も罰則もやだもんねー」

早足で階段を駆け上がっていく。まだ少しくらいは時間に余裕がある、はず。ハグリッドの小屋までは毛玉を抱き上げて走る。



ノックを二つすると、少しどもったハグリッドの声がした。私だよ、というとほっとしたような声をあげて扉を開けてくれた。

「どうした、こんな時間に…まあ入れや」
「うん、毛玉が…ぅあ」

招き入れられたハグリッドの小屋はすごく蒸し暑い。今はまだ冬の部類に入るはずなのにどういうことだろう。もさりとした髪の毛が湿気と暑さで広がる。

「みちょくれ、明日には孵りそうなんだ」

こつこつと中から音が聞こえる大きな卵が部屋の真ん中に陣取っていた。

「これ、…何の卵?」
「ドラゴンのな、ちーっと賭けに勝ってもうたんだ。ハリーたちにはもう知らせちょるからな、お前さんも明日こいつが孵るのを見るか?」

ハグリッドは興奮気味に早口でそう言う。でも明日は普通に授業があるから、とやんわりと断る。ドラゴンの孵るところなんて生きてるうちに見れるのは稀だけど、明日は魔法薬学と変身術がある。魔法史だったならばサボったんだけどね、と笑うとそうかそうかとハグリッドは髭を引っ張った。

「そいじゃ孵ってから面倒みるの手伝っちょくれ」
「うん、それはいいかも。…そう、あのね、毛玉が最近太ってきた気がするんだけど」

小屋の隅で暑そうにうな垂れる毛玉をぶらんと持ち上げて、ハグリッドに見せる。こうみると、お腹のあたりま毛がもふもふで、太っているかどうか全くわからない。だけど、去年母上から頂いた時よりはずっと重いとは思う。

「この子太ってる?」
「太っちょるというより…種類が大型なんじゃねえか?」
「ああ…なるほど」

猫にも大型の種類なんてあるんだ、なんて考えつつ毛玉を抱きかかえた。うん、重い。

ハグリッドに挨拶をして、消灯時間ギリギリか、過ぎたくらいの寮へ急ぐ。ああでも、やっぱりドラゴンが孵るところはちょっと見たかったかもなあ。


(ねことたまご)
121109