起きて、洗面を済ましただけの状態で私は悩んでいた。服は寝間着のままだ、朝食だってとっていないからお腹も空いている。

朝食の時は目立つ。昼食の時も目立つ。晩御飯の時だって目立つ。どうしようかと考えて、じゃあ手紙を、と思った。手紙なら誰に知られるでもなくレギュラスさんに話せると思ったんだ。

だけど、手紙だと返事がこないかもしれないし、第一私はフクロウを飼っていない。

出鼻をくじかれた気分に浸る。偶然を待つしかないのだろうか。偶然レギュラスさんが一人でいるところを見つける?そんなの何分の一の確率なんだ。頭を抱えたくなる。

「なおぅ」

ぱっと振り返ると、毛玉が扉に前足を掛けてこちらを見ていた。不服そうな緑色が、扉を開けろと訴えかけてくる。そうか、毛玉に見つけてもらえば良かったんじゃないか。彼女は何かと部屋から飛び出しては、ほくほくした顔で帰ってくる。絶対レギュラスさんの所へ行っているんだろう。

今日は休日だから、きっとどこかにいるんじゃないだろうか。

 * *

朝食。少し遅く来たから人は少ない。あと談話室でドラコたちが魔法薬学の課題に追われいた。セブルスは一年生にも容赦ないのね。

甘いミルクティを飲みつつ周りを見回すけれど、どうやらレギュラスさんも双子も、ハリーたちもいない。毛玉は私の隣でおとなしくご飯を食べている。もう少しで食べ終わりそうだけど。


「あれ、おちびー?」

少し遠くからかけられた声が私を呼んだ。二つが綺麗に重なった声音と、その呼び名はあの双子しかいないだろう。不服ながら振り返れば、案の定双子が手を振っていた。

「なーにしてんだよ」

「あーわかった、一人飯だな?

「一人じゃありません。この子がいますし?」

どや?と毛玉の頭をもさもさ混ぜる。頭に手を乗せた反動の所為か、毛玉のマズルが少し深い餌皿に入った。毛玉が非常に不満そうに「ふみゃぁお」と鳴いて、私の手を頭を振ることで払って、椅子を蹴って飛び出す。

「……」

「…一人です」

小さな静寂を二人の馬鹿笑いが破る。周りにいた何人かはちらりとこちらを見ては、まさ自分の世界に戻っていく。いや、なにより重大なのは、毛玉が私を見限って去って行ったということだろうか。くそう。

「そーだ。今ハリー達が談話室にいるんだけどさ」

「暇ならポラリスもこないか?」

ぱちくり。といった表現が一番手っ取り早いのだろうか。談話室、といえば勿論グリフィンドールの談話室だろう。私なんかが入ってもいいのだろうか。私は、スリザリン生なのに。

「暇、だけど」

思わず口について出る。双子は待ってましたとばかりに私を間に挟んで、宇宙人を連行するような体制になった。そして器用に私を椅子から浮かせて、そのまま早歩きを始めた。

ちょっと無理やりだけど、やっぱりグリフィンドールは暖かいなぁ、なんて思いながらも、私の口からは情けない悲鳴が漏れていたのである。



(チャンスですよ、ポラリスさん)