ゆるゆると孤独に一匹狼生活を送るポラリスですこんにちは。数人が束になってあぶれている子をよってたかっていじめるという恐ろしい現象にはあっていません。
聞き耳をそばだてたところ、私はクールだの高嶺の花だのさすがマルフォイ家の子女だのというような言葉がたくさん。育ちがいいってすごいんだね!棒読みしちゃう!
* *
「…Ms.マルフォイ、」
「はい先生」
毎度毎度呼び出しされるのに馴れたのは恐ろしいことだ。ほとんどレポートの整頓を手伝ったり、魔法薬に使うなんかの薬瓶の整頓だったり。ほとんど整頓してるだけである。なにこれ雑用?
魔法薬教授、セブルス・スネイプ(三十代始めらしい)について思い出すことはこれっぽっちもない。そして先生自身も気付いているらしいのに言及しない。それで思い出すかもしれないのにね!
しかしオリバンダーの「約二十年ぶり」というワードから察するに「前」の私が入学したのが二十年ほど前だということになる。入学は十一歳だからは死なずに生まれ変わらずに今生きていれば三十代くらいということだ。
つまり!前世の私とスネイプ先生は同学年だという可能性もある!
…なにそれこわい。
「先生、この山が三年生のレポートです」
「わかった」
せわしなくぺらりぺらりと提出されたレポートをめくり、内容に眼を走らせて評価をつける。あ、今のレポートD判定されてた。どんまい。にしても早いな。あと私帰っていいのか。お昼食べたいんだけども。
「…紅茶は好きか」
「えっ、あ…好きですけど…」
ガタリと椅子から立ちあがり、奥に行って何かしている。え、なんなのこわい。試作品の魔法薬とか飲まされたくない怖い。
戻ってきたスネイプ先生の手にはティーカップが二つ。一つは私の目の前に置かれた。もう一つは先生の前、大量の羊皮紙がひしめいていた所に置かれた。
ふるりと先生が右手で杖を軽く振ると、今日の昼食であろう柔らかそうなサンドイウィッチとスコーン、あとクロテッドクリームとジャムが白い食器に乗って現れた。…魔法って本当に便利だとつくづく思う。
「昼食がまだだろう。食べたまえ」
スネイプ先生いいやつだな!私食事のお世話してくれる人好きだよ!父上と呼びたい。ルシウス?あんなデコ野郎知らない。
「ありがとうございます」
もそもそとサンドウィッチを頬張る。レタスシャキシャキ。スネイプ先生は紅茶の飲みながら難しそうな本を読んでいる。食べないのかな。確かに不健康そうな顔だけど。
「先生、」
そう口に出して、紅茶を飲もうとしたらカップに入っているのはミルクティで、すこしびっくりした。私は嗜むような紅茶はあまり好きではない。ミルクティのように甘くて柔らかい味が好きだ。…なんで知ってるんだろ。
「なんですかな」
こちらに眼も向けずに本のページをぺらりとめくる。
とりあえず聞こう。「前」の私についてでも。なにか反応があるかもしれないし、その弾みで思い出すかもしれない。
「ポラリス・フォンダンさんってどなたですか?先生のお知り合い…ですよね」
我ながら白々しい。だがしかし何か情報を得れば思い出せるはず。今まではそうだ。場所は行ったり聞いたら思い出すし、人は大体顔を見れば思い出す。ルシウスとシシー先輩は名前と顔でビンゴした。
「…我輩の知人、だ。グリフィンドールに所属していたが、寮関係なくはしゃぐアホだった」
…いや、せめて「前」の私と先生が知り合った経緯くらい…それがあったらきっと思い出せるのに。多分。というかアホって。アホってなに。
「十年とすこし前だ。彼女は死者として名が上がった。何故死んだのかはわからないが、自殺だったと聞いた。…Ms.マルフォイの髪が黒ければ生まれ変わりのように似ている」
生まれ変わっても同じ顔なのかは知らないがな。と付け足した先生に適当に返答しながら、私は内心焦っていた。え、自殺?まじ?なんで?スネイプ先生を思い出すとか、それより晩年の私に何があった。
「なんで、自殺、私が?」
ついぼそりと口に出してしまう。びくりとスネイプ先生を見返ると驚いているようなやっぱりかというような、微妙な顔をしている。バレた。
「やはりそうか…」
(や っ ち ま っ た)
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