ろくに練習もしないくせに、雷門に入るなよ。僕は雷門がすきだ。だから聞いた。
どうして彼は練習に参加しないんだい。
みんなの口から語られたその話を、僕は最初、信じる気はなかった。冗談のように現実味がなくて、だけどみんなの顔が真剣だった。それがなにより深刻だった。
弱いな、と思う。僕には兄弟がいないからわからないけど、だけどこれだけはわかる。吹雪士郎は弱い。
「吹雪くん」
「…どうしたの」
弱々しい声で僕の呼びかけに応える。軽く微笑む吹雪くんだけど、目の下の隈は隠せていない。
「亜風炉くん?」
本当に、小さい声。その白い肌に触れれば、粉々に砕けてしまいそうだ。
「…いや、すまない。なんでもないよ」
「…そう」
なんでもないと言ったけど、なんでもないわけがない。僕は吹雪くんがいつも気がかりでいけない。
そして吹雪くんはまた儚く笑った。
「また話しかけてくれると、嬉しいな」
ああ、この気持ちをなんと形容しようか。僕の心に沸いた、この気持ち。心地よいけれど、少しだけ冷たいような。ああ、うまく言えないな。
「もちろんだよ、吹雪くん」
そして吹雪くんは、やはり微笑む。消えてしまいそうで、咄嗟に肩を掴んだ。
「どうしたの?」
「僕は…」
なにがしたいのかは自分でもわからない。消えるはずがない吹雪くんの体が、一瞬だけ透けて見えて怖くなった。こんなこと、ありえるはずがないのに。僕はきっと幻覚を見てるんだ。
「ごめんね」
吹雪くんは、馬鹿のひとつ覚えみたいに、また笑った。
20100326
アフ吹ってマイナーなの?
ふたりとも女の子みたいなのでちょっと百合っぽいな