※グロ注意
塔子が病んでます





すき、だなんて言葉では表せないくらい、あたしはあの子に恋をしている。
だけどあたしはわかってる。リカの隣にはいつだって一之瀬がいる。一之瀬がいなければ、そりゃあリカは雷門に入らなかったかもしれない。ならばだれが悪いんだろうか。同性をすきになってしまったあたしかな。それとも。リカがあんなに可愛いから悪いのか。
―――違う。
一番悪いのは、一之瀬一哉だ。あいつはもう、『リカを雷門に入れる』という重役を果たした。ということはもう、一之瀬は用無しじゃないか。殺してしまって、構わない。



「リカ、ちょっと一之瀬を貸してくれないか?」
「んー、ええけど、うちのダーリンに惚れんといてな!」

明るく、太陽のように笑うリカ。可愛いな本当に、あたしだけのものにしたい。

「リカが決めるなよ…」

一之瀬が言う。呆れた声で苦笑している。なんだよこいつは。あたしがどんな思いであんたを誘ってると思ってる。

「どうした、塔子?」

リカの腕からするりと抜けて、あたしのほうへ歩いてくる一之瀬に向けて、あたしは軽く微笑んだ。

「ダーリンっ、待ってるわなー!」
「はいはい…」

うらやましい。ああもう、うらやましいな本当に。あたしもリカに愛されたい。あたしなら、一之瀬みたいにはならないよ。リカだけを見てあげる。ずーっとリカを離さないから。あたしがリカを、守ってあげる。一生を賭けて。


――――――――


「ついてきてくれてありがとう、一之瀬」
「いいよ。俺もそろそろリカから離れたかったから」

うわ、うっざい。幸せゆえのわがままってやつなのかな。まあ、何にしろうざったいことに変わりはない。

「リカが嫌いなのか?」

ちょっといじわるな質問。一之瀬は少しだけ考える顔をした。

「嫌いではないよ。サッカー選手として尊敬してる」

違うよばかだな一之瀬は。サッカーはいま、関係ない。心の底ではわかってるんじゃないのか。

「違うよ一之瀬。おまえはリカがすきなのか?」
「……すきじゃ、ないよ」

一之瀬の真面目な顔。ああ気持ち悪い。

「…すきでは、ない」
「曖昧なのか?」
「そうだね。リカのあの態度をどう受け止めればいいか、見当がつかない。だけど俺はそれをいやだと思わないし、」
「…一之瀬」

気づけば目の前の一之瀬が、倒れていた。ああ、あたしはやってしまったのか。
手が真っ赤だった。一之瀬の血で。

「…と…うこ……なん…で、」

隠し持っていた小ぶりのナイフで、一之瀬の腹を何度も刺した。叫び出さないように、一応、口を踏みつけておいた。
一之瀬の目が見開かれて、あたしを見る。信じられない、といったような目。だけど信じろ、一之瀬。あたしはこういう人だ。

「……リカの顔が一生見れないようにしてやる」

腹をえぐっていたナイフを一旦抜いて、あたしはナイフを振りかざす。
勢いをつけて、一心に。一之瀬の目に突き刺した。
一之瀬は死んだのか、少しも動かなくなっていた。それでもまだ足りない。人であったのかわからなくなるくらいに、ただの肉の塊にしてやる。
ナイフを引き抜けば、目はどうなるんだろう。ごろっと眼球が出てくるのかな。それとも目というものは結構頑丈で、ナイフなんかでは取り出せないのかな。少しの好奇心で、あたしはナイフを引き抜く。残念ながら、ナイフに眼球は付いてこなかった。ああ本当に、残念だ。
ナイフを持ち直して、今度は腹を刺すのではなく、裂いてみる。まだまだ溢れる血に、あたしは興奮し始めていた。黄色い雷門のウエアが真っ赤に染まって、心が躍った。

「……大丈夫だ、一之瀬。安心しろ」

聞こえているのかな、あたしの声は。

「リカはあたしが幸せにするから、安心して死んでいいよ」

最近理科で習った臓器が露になる。ここが胃で、ここが小腸か。勉強になる。一之瀬ありがとう。あたし、ひとつ賢くなれた。

「腹にも飽きてきたな…」

もう仕上げにかかろうか。
あたしはナイフを構えて、一之瀬のその細い喉元に一心に刺し込む。

「…ああ、やっぱりうまく切れない」

思った通り、骨は切れなかった。ナイフを左右に動かし、ゴリゴリと音をたてる。ニュースでよくあるばらばら殺人も、こうして地味な作業があるのかな。
そのとき。

「………とう、こ…?」
「……え?」

骨とナイフが擦りあう音しかしない空間に、声が飛び込んできた。

「……リカ…」
「ちょ、塔子、なにやってんの…?それ、なに…?」

リカが一之瀬を指さす。

「『それ』なんて失礼だよ、リカ。おまえの愛しのダーリンじゃないか」
出した声は自分でも驚くくらいに低くて、掠れていた。

「うそ…、」
「うそじゃない。信じてリカ」

これからは、あたしがそばにいるよ。ずっと、ずーっと、一生守ってあげるから。

「いやや、」

一之瀬の顔を(もう原型を無くしているけど)見ると刺していない片方の目がまだ開いていて、あたしを睨んでいた。それはなぜか宣戦布告されているようで無性に腹がたつ。だからついでにその目も刺しておいた。
切り裂くような悲鳴が聞こえて、やっぱりリカの声はどんなのでも可愛いなと思った。





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20100401
エイプリルフールはなにをしてもいい日

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