00.

子指と子指に結ばれる、運命の赤い糸。

赤い糸には力がある。

運命を動かす大きな力が―――――…






「ちょっと、起きな!もうすぐホームルームだよ?!」


いつものように早起きをし登校して自分の席でぐっすり眠っていたら、もう先生が来る時間帯らしい。いつものように仲の良い友達に起こされて辺りを見回すと、なんだか皆が騒がしい。どうかしたのかと友達に聞いてみると、うちのクラスに転校生が来るらしいのだ。しかもかなりの美人さんらしい。なにそれ聞いてない。是非拝まなければ。


(えーっと、眼鏡眼鏡…)


机の上をきょろきょろするも、寝る前に置いてあった眼鏡ケースが見当たらない。困った。あれがないとすごーく、困る。視力的な意味ではない。私の精神的な意味で、ものすごーく、困るのだ。


「はい、これ。君のだよね?」


つんつん、と肩を突かれて顔をあげると、差し出されたのは見覚えのあるケース。良かった!受け取って、見つけてくれた彼にお礼を言った。


「ありがと、尾浜君」

「どういたしまして。多分寝てる間に飛ばしちゃったんだね」

「…みたい」


にっこりと笑ってそう言った尾浜君。うん、ちょっと恥ずかしい。


「勘ちゃん、先生来るぞ」

「あ、うん」


じゃあね、と言って尾浜君は自分の席に戻っていった。尾浜君の席は決して近くは、ない。そんなところまで飛ばしていたのかと、自分の寝汚さにショックだ。

ちら、と先程まで話していた尾浜君を盗み見た。ここで言っておくが、別に尾浜君に恋心を抱いてるとか、そんなんではない。厳密にいえば、見ているのは『尾浜君の左子指』だ。彼の子指に結ばれている、『赤い糸』を見ているのだ。


人には子指に赤い糸がある。所謂『ウンメイノ赤イ糸』、ってヤツ。何を言っているんだと思われるかもしれないが、事実である。何故なら見えるのだから。





00.赤い糸が見える子のはなし
(尾浜君の運命の人は、今日は来てないなぁ…)

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