01.
忍術学園三学年はトラブルメーカーが多い学年である。しかしその三学年に、知らない人はいないという程有名な生徒がいた。
「萌黄ー!おはよう」
「……(こくん)」
「萌黄は朝早いな!今から飯か?」
「……(こくん)」
「そうか!じゃあ僕と一緒に行こう!食堂はこっちか?!」
「……」
「日比崎」
「……(ぺこり)」
「ああ、おはよう。昨日はごめんね、せっかく時間を作ってくれたのにまた僕ばかり喋ってしまって」
「……(ふるふる)」
「何だ伊作、お前また日比崎に愚痴きいてもらってたのか」
「いいでしょ、別に。留さんだってこないだ用具委員でもないこの子に用具の説明一生懸命してたじゃないか」
「…お前、一体どこで見てたんだ…」
「どうした、日比崎」
「……(スッ)」
「戦輪か?教えてほしいのか?」
「……(こくん)」
「そうか!安心しろ、この平滝夜叉丸にかかればお前も戦輪をなんなく使いこなせるようになるだろう!なんせこの学園一成績のいい私が……(グダグダ)」
「……」
「……」
「……ぼそ」
「……」
「……ぼそ」
「ねぇきりちゃん、日比崎先輩と中在家先輩、何してるの?何か日比崎先輩は口をパクパクしてるけど…」
「日比崎先輩が中在家先輩に貸してもらった本について中在家先輩と盛り上がってる」
「あれ盛り上がってるんだ…」
「図書委員会では日常茶飯事だよ。日比崎先輩は喋んないから中在家先輩が口の動きを読み取って会話してんの」
「さすが…」
「たまに委員会以外で一冊の本について中在家先輩が語ってる時もあるらしいよ」
「こないだも平滝夜叉丸先輩の自慢話黙って最後まで聞いてたし、定期的に善法寺伊作先輩の愚痴も聞いてるみたいだし…聞き上手だなあ、日比崎先輩…」
日比崎萌黄。三学年い組の彼は、『まったく喋らない』生徒で、『学年一の聞き上手』である。
01.彼は聞き上手
(たまに人生相談してることもあるそうです)
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