05.



突然、転校生がやって来た。いや、転校生が突然なのは当たり前なんだけど、もうすぐ夏になりそうな変な時期に、その子はやって来た。


「野々原美子です!よろしくお願いしまーす!」


うっわあ。
それが最初の感想だった。その子はいわゆる美人という部類に入るのだろう整った顔だ。あの顔でにこっと微笑まれた男子はその気がなくてもどきどきするだろう。だけれど、元気な声で笑って挨拶したその子には悪いけど、俺は彼女を「アウト」だと思った。明らかに染めたであろう茶色の髪で、ぶりっこ全開。なによりあの瞳だ。あんな真っ青な瞳なんてない。友達に外国人が何人かいるから、彼らの青い瞳がどういうものかよく知ってる。白に青を落としたみたいな、明るいブルーなんだ。透明感が宝石みたいな質を出して、ほんとに綺麗だった。でも、彼女のは違う。あんな濃い青の瞳なんてあるわけない。

多分、教室もドン引きだ。だってあんなに転校生の話題で騒いでいた教室が、彼女の自己紹介で一気に静まり返った。男子は転校生のあまりにもあからさまなぶりっこに今まで膨らませていた想像を破壊され口が開いたままだし、女子はそのあざとさに顔を歪めている。しかし転校生は何故かその光景に満足そうな顔をした。なんで?



「じゃあ野々原の席は…あそこな。田中、手ェ上げろー」

「…はーい」


先生に席を指定されると、転校生は間延びした返事をして席に着く。そのとき、返事の前に一瞬嫌そうに顔をしかめたのを俺は見逃さなかった。そのままHRの間彼女を観察していると、彼女の目線が一か所に留まっていることに気付いた。そのまま、視線を辿る。


(…ははーん…)


俺はわかってしまった。わっかりやすい。



彼女の視線の先には、生真面目に先生の話を聞くうちの生徒会長がいた。







SHRが終わると、転校生の席にはたくさんのクラスメートが集まったかというと、誰も来なかった。一年前に転校生が来た時は質問責めで大変だったことを考えると、皆彼女が変だと言うことに気が付いてるのだろう。さして質問することもない(あったとしてもこれから一緒に過ごすのだ、おのずとわかるだろう)俺は、授業の準備をはじめようとした。

すると転校生は、授業の支度もせずにさっと立ち上がった。そのまま前を歩いていって、彼の前で立ち止まる。


「ねぇ!美子、貴方と仲良くしたいな!名前教えてくれない?」

「ぶごほっ」


一つ言いたい。俺がこの場面で吹き出したのは、転校生が自分のことを名前で呼んでいることに対してでも、突然転校生が友達になってよ宣言をしたことに対してでもない。いや、その発言にも十分笑うには値するんだけど。

あの手塚が。誰にでもほとんど公平なあのうちの生徒会長が、


「…」


あんなに嫌そうな顔をして黙り込んでしまうなんて、誰が想像しただろう!




05.The student say,
(とある少年の独白)(ちょ、ちょっと!誰か、誰かカメラ!!)




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