04.

手塚は、本来あまり人を嫌うことのない性質である。自分と違う思考・嗜好を他人が持っているのは当たり前であると思っているし、幼馴染でもう経験済みのことである。だから相手を否定する言葉は極力言わないし、考えない。そもそも他人と自分との差異を突くという発想すらないかもしれない。手塚とはそういう人間だ。

しかし、今日だけは話が別だった。手塚は上記に挙げたような人物であるがゆえに、出会いがしらにその人物を嫌いになったりは絶対にしないのだが、本当に、本当に今回だけは話が別だった。


「野々原美子です!よろしくお願いしまーす!」


軽くウェーブのかかった茶髪を二つに縛り(あれはおそらくツインテールというやつだ、雛子が杜姫にしてやっていた)、蒼の瞳は爛々と輝いていた。ここで整理したい。茶髪というのはたくさんいる。手塚自身も地毛ではあるが黒髪とは言い辛い程度には色素的な問題で頭髪は茶色い。青い瞳も、まああんなに青いのははじめて見るが、血筋に外国人が混じっていれば遺伝でそんなこともあるだろう。自己紹介の声も溌剌として明るい。今の段階では到底印象が悪いなどとは思えないはずなのだが。

無理だ。手塚はそう確信した。幼馴染(男)の言葉を借りるならば、これは「ナイ」。それが今日やって来た転校生に対する手塚の評価だった。初対面で何をと自分で自分を叱咤したが、それでもその認識は直りそうになかった。

手塚は中学三年生にして、はじめて「生理的に無理」という感覚を経験することになったのである。



そしてこの日を境に、手塚の学校生活はがらっと変わることになる。


04. Premonition.
(虫の知らせ)(それが見事に的中したということをすぐに知ることになる)



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