01.

杜姫にとって、転生という言葉は魅力のある言葉だった。迫害された世界から離脱する、素晴らしい魔法の言葉。

『巡れ。永遠に』

しかし杜姫は、その言葉の意味を全く理解していなかったのだと後に身を以て知ることになる。



















目の前には刃物を持った友人…だった人。自分の犯したことに驚愕しているのか、呆然と立っている。


(あー)


倒れこんだ体勢のまま、ため息をついた。どうも自分には人とうまくコミュニケーションする能力が備わってないらしい。前の生では恋人に暴力をふるわれて死に、その前は階段を踏み外して転げ落ちて死に、その前は―――――何だっけ?


(ああもういいや。面倒くさい)


一体何度生まれ変われば終わりが来るのだろう。何度も何度も「********」の記憶を持った存在として生まれ、死に行く。杜姫を居もしない神に捧げた父の顔や、水に沈む時の冷たさまで、しっかりと、まるで機械のように杜姫の頭は今まで巡った人生の記憶を一欠片も残すことなく、記憶する。神にこんな願いをするのではなかった。神が優しかったことなんて、一度たりともなかったのに。




(でも、この生は少し楽しかったかな)

不意に騒がしくなって、『彼女』は杜姫と刃物を持った少女を見て呆然とした。すぐに我に返って杜姫のもとへ駆け寄ってきたが、すでに杜姫はもう何も見えていなかった。





01.Go to the next life.
(泣きそうな『彼女』の顔が、この生の最期の記憶。)




杜姫は何度も巡る自分という存在に飽き飽きしていた。転生した年数を足せば、それこそとうに大樹の樹齢と変わらない。そのころにはもう彼女は自分の能力の限界や性格を熟知してしまっていた。杜姫はつまらなかった。もういなくなってしまいたかった。歪んだ性格はもう直らない。自分に出来ることはあらかたやり遂げてしまった。これ以上人生で何を目標に、糧に、希望に生きていけばよいのか。どうしたらいいのか。出口のない迷路に迷い込んでしまったような気分だった。

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