『腹で俺が何を考えているか、君たちに分かりもしない』

そんな台詞を吐いたことがある箕嶋副会長は、絵に描いた王子様のような美貌と優しい人当たりで、多くの生徒に人気を博している。噂では非公式のファンクラブが有る程だという。
だが、彼と近しい人物になればなるほど一般とは、彼の評価に差異が広がる。
最近その理由が、わかった気がする。

「何か仰ったら如何ですか?」
「……その、」

意を決して、職務放棄を咎めにきた。けれども今、俺は二の足を踏んでいた。

「俺は、今俺の人生の意味を見出だせる最大のチャンスの中なんです。仕事を蔑ろにしているのはこちらの非だと認めます。が、それでも俺は仕事に戻りません。自分のことが第一ですから」

彼がそう言うのなら俺には何も言えない。人生を盾にされて、それを論破出来る武器がない。
副会長は本当にやりたいことを優先しているのみ。今更役員の変更など行えないがため、自然と仕事を投げ出す形になってしまうだけだ。
しかし、それは屁理屈だ。それでも、言い返す言葉がない自分の無力さが悔しかった。
俺は、そんな風に道を迷うことなど無かったから。

「貴方が、彼のように俺を受け止めてくれるのなら、真正面から俺の迷いを肯定出来るなら、貴方側に付くことも考えますがね」
「……は」

何を言っているんだコイツは。

「うん。ですよね、分かってます。やっぱり彼だけが僕の道標だ。だって、貴方は人の気持ちなんて受け止めたこと無いでしょう? 孤高の王様ですものね。愚民なんて取るに足らない存在ですよね」

全く以て言い掛かりだ。
そんな振る舞いをした覚えは一切無い。だが、何故か校内での自分の印象はそうらしい。自覚はある。

「ふふ、俺はね、今ここで本音を言っちゃいますと、
今すぐ君を押し倒してまずはその小綺麗な口にこの汚い性器をぶち込んでやりたいかな。そして君のプライドがずたずたに引き裂かれるまでその躯を弄んで反抗する気も失せた頃その腹が孕む程に精液を注ぎ込むんだ。ああ、臓器を全てひたひたに満たして口から溢れさせるのもいいな。それで最後に膨らんだお腹をゆっくり撫でながら『赤ちゃん出来ちゃったね?』なんて言っちゃうみたいな! ちょーグロいちょー燃える。想像するだけで体の震えが止まらないし。出来るなら是非とも実際に君を犯させて欲しいんだけどなー。
みたいな感じですが、如何でしょう」

俺は無言で首を振った。必死に。

「だと思いました。だって貴方、一度も目を合わせてくれませんでしたし」

体が強張り、肩が跳ねた。
流石に気付かれていたのか。だとしたら、微妙に置いたこの距離も、気付かれているだろうか。

「会長、好きです。俺のために苦しんでください」

彼は、端的に言えば病んでいる。無関心な人間には優しく振る舞うその反面、好意を抱く人間は徹底的に罵り痛め付ける。生粋のドSヤンデレ腹黒っ子だったのだ。
だから、近付きたくなかった。彼には。

「いや、だ……」

ここの生徒に対する恐怖心が少し、ほんの少し増した気がする。

その日俺は、終始絶えることの無かった彼の笑顔を夢にまで見てしまった。


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