malice【意地悪】(雪燐)


「ん、んっ、ゆき、お」

響く甘い嬌声
掌で、肌を確かめるようにそっと滑らせる。
向かい合った状態で、髪から、額、瞼、頬、耳、首、鎖骨、順番にキスを繰り返していく。

「あ、ぁ…ゆき、」

「ん?兄さんなに?」

「ゆ、び…ぃっ……ん、」

「ん?」

指を掠めたり、軽く入れたり後孔に緩い刺激を与え続ける。

その間も唇で全身を愛撫する。
可愛くて仕方ない。
羞恥に吊り上がった目も、赤く腫れた目許も、口の端の飲みきれなかった唾液の残骸も。

ぜんぶ、ぜんぶ

人差し指で中を解し始める。
襞が指に絡みついて収縮を繰り返す。

「兄さん、此処は素直だね」

にっこり微笑んでやると顔を腕で覆ってしまう。
ねぇ、泣いちゃうくらい気持ちいいなんて、それ褒めてるようにしか思えないよ。

ゆっくり傷付けないように、指を増やして中を愛撫していく。
同時に兄さん自身に舌を絡めて、きつく吸い上げる。

「んーっ、んん、…っはぁ…」

「もう、ちょっと我慢して」

コンドームの袋に手を伸ばして、腕の隙間からこっちを見る兄さんに見せつけるように口で破る。
更に顔が羞恥で赤くなるから、今更だな、なんて思ってフッと微笑む。
兄さんは生まれたままの姿なのに、自分は服を乱しただけで、今更こんなに背徳な行為をしている自分に吐き気すら覚える。

でもね、兄さんが欲しいんだ。

それでも、欲しくて堪らない。


「あ、ゆきぉ……!!」

「ん?何、兄さん」

「はい、って…ぁ、あっ」

「うん。気持ちいいでしょ?」

先だけを軽く入れて出してを繰り返す。

「あ、んっ……ゆき、お、ゆきお、」

「うん、ちょっとじゃ辛い?」

左右に髪が乱れてパサパサと音を立てる。

「ん、イヤ?抜く?」

「っ、いや、だ……」

「可愛いね」

眼鏡を外して、ゆっくり体重をかける。
粘液が絡みついてゆっくり奥へ進んでいく。
邪魔な眼鏡を外して、唇を思う存分合わせる。

「んー、んー…っはぁ」

「ごめんね、苦しかった?」

左右に繰り返し揺れる髪に新しくキスを一つ
奥まで収めきって、襞の緩い動きを楽しむ。

「ん、…ゆきおっ…」

「なに?」

ヒクヒク小さな痙攣を起こしてるのだって知ってる、中が僕を求めて絡みついてくる
もっと欲しがって


「、好き」

更に体重を奥へ奥へ

「ひ、ぁ…や、やだ……ゆきおっ」

そのまま、密着して抱き締める。

「燐、」

耳に直接名前を贈る。

大きく、収縮したのを合図に想いを穿つ。


「燐、っふ…」

「あぁ、んっん、ん、」

奥へ奥へ

「ゆき、おっ、あ、ぁ、奥…やだ、ぁ」

「ん?奥気持ちいいの?」

一番奥に、入り込む。
ピタリと重なり合って、ねぇ、僕らはなんで一つじゃないんだろう。
なんで僕は兄さんを守るしか出来ないんだろう。

「ぁ、あんっひぁ、ああ」

「燐、もうイく?」

首が縦に何度も揺れる。

「ふふ、一緒に、ね」

片手で兄さん自身に指を絡めて、もう片方で顔の腕も掴む。

「っはぁ、イく時の、顔見たい」

精いっぱい、首を横に振るけど快感は確実に射精を促していく。

「あ、あぁぁ…ん、んー…………っはぁ!!!」

「…ん、」

余韻に浸る兄さんの溶けた目許にキスを一つ。
目尻の涙を撫で上げて、力の抜けた体を抱き上げる。
そのまま尾てい骨に指を伸ばして、尻尾を掴む。

「あ゛っ、ひ、」

再び締まる中で、僕らの細胞が死滅を繰り返す。

「ゆき、お、むり」

「大丈夫、ほらまた元気になってる」

背徳だけを積み重ねて。
いつか、きっと暗い闇が迎えにくる。

その時まで、どうか、少しでも幸せでありますように。








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