あおいとり









気が遠うなる。

確実に永くて、薄い人生を積み重ねていくんやろう。

どんなに足掻いても人間は「死」に向かって歩いとる。

せやけど、あいつは人間やあらへんから
悪魔やから




大事な誰かを
大切な人を見送る側








背中にぬくもり。
腕が前に回る気配はなく、シャツをぎゅっと掴んでいる。

「なんや、くっつき虫か」

「ちげぇ」

奥村の弟がこの前の任務で珍しくヘマをやらかした。
受けた魔障は重く3日経ってやっと面会が許されたと聞いた。

「奥村先生は霧隠先生が看とんやろ?なんも心配いらんやないか、あの人はええ加減やけど腕は確かや」

「……」

「何が不安や、言うてみ?」

「…俺は、滅多なことじゃ死なねぇ」

「せやな」

「でも、人間は…簡単に死ぬ」

「嗚呼」

「お前も、俺を置いて逝くんだろ?」






『柔造も蝮もみんな、行ってしまうんか?!』






幼い頃の自分がフラッシュバックした。

力がなくて、縋って宥められて守られるだけの自分。



やから、強うなりたい。
守ってもらってばっかりやなく、守れるくらいに。


「俺はお前を裏切らん。」

置いてったりせん。

「安心せぇ、俺が死ぬまでに俺がお前を殺したるさかい」



「雪男は、俺を庇って怪我した。俺は、怪我してもすぐ治るのにあいつ、」

下を向いた奥村の頭を撫でるために手を置く。


「雪男も、勝呂も…いっつも俺を庇うから、」

「お前が後ろめたい思うことなんかない、俺はお前と同じ時間を生きたいんや。奥村先生かて、そやろ。今まで同じ時間過ごしてきたんや、悪魔やとか人間やとか関係あらへん。大事やからお前を守りたいんや、」


引き寄せて、頭に小さくキスを一つ。




滲んだ、視界を遮るみたいに目蓋を閉じて
俺が守りたいもんを一つ一つ思い出す。




なんでも笑う奥村に、哀しみが訪れんようにただただ、強く抱き締めて









報われない恋でした。

それは、彼と同じ時間を過ごしていく。




それでも、俺は幸せでした。






[目次]



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